「C. メタボリック症候群」カテゴリーアーカイブ

メタボリック症候群

“内臓脂肪の蓄積” が原因で、複数の生活習慣病を発症する症候群をメタボリック症候群といいます。「メタボ」という親しみやすいフレーズを耳にしたこともあるかと思います。診断基準は、「腹囲+2項目の異常」であり、見た目だけでは判断できません。

●腹囲 (必須)
男性 85cm以上、女性 90cm以上
●項目 (2項目)
① 中性脂肪 150mg/dL以上 and/or HDLコレステロール 40mg/dL未満
② 血圧 130/85mmHg以上
③ 空腹時血糖 110mg/dL以上

脂質異常症高血圧症糖尿病としては前段階であっても、それぞれを複数合併すると、動脈硬化のリスクが高まることから、メタボリック症候群という概念が生まれました。BMI (body mass index):体重 (kg)÷身長 (m)÷身長 (m)>25で、「肥満」と定義されますが、そこに健康障害やそのリスクを伴えば「肥満症」といいます。

内臓型肥満では、脂質異常症高血圧症糖尿病の発症が92%もあるといわれています。ちなみに、皮下型肥満では60%とされます。つまり皮下脂肪よりも、内臓脂肪が動脈硬化と関係しているといえます。腹囲が男性よりも女性の方が大きく設定されているのは、女性の方が男性に比べ、皮下脂肪が多いためです。

最近は、健康診断でも「腹囲」を測定されますが、測定は ”立位で息を吐いた後のおへその回り” と決まっています。最も細い「ウエスト」を測定されずに、不満に思われてしまうこともあるようですし、ついついお腹をへこませて測定してもらいたくなります…。それでは意義がありませんので、覚えておいて下さいね。

脂肪は巨大な ”内分泌臓器” です。皮下脂肪に比べ、内臓脂肪細胞は、ブドウ糖の取り込み能、脂肪の合成能、脂肪の分解能、ホルモン産生能が高いとされます。内臓脂肪細胞から、アディポサイトカインと呼ばれるホルモンが分泌されますが、善玉因子としてはアディポネクチンが分泌され、悪玉因子としてはレプチン・TNFα・IL-6・遊離脂肪酸・アンジオテンシノーゲン・PAI-1・HB-EGFなどが分泌されます。

悪玉因子のアディポサイトカインは、様々な機序で、インスリン抵抗性をまねき、動脈硬化を助長してしまいます。メタボリック症候群になると、糖尿病発症リスクが3-6倍、心血管・脳血管疾患発症とそれによる死亡リスクも1.5〜2倍に上昇するとされます。

繰り返しますが、脂質異常症高血圧症糖尿病、それぞれとしては前段階であっても、重複するとリスクが高くなりますので、早めの対処が必要です。食事療法や運動療法がその中心になりますが、目標は目先の数値の改善ではありません。発病を予防することが目標であり、将来の健康、そして、楽しい生活のために…。

肥満やメタボリック症候群と関連する、糖尿病脂質異常症高血圧症睡眠時無呼吸症候群禁煙外来の投稿もご参照下さい。