「M. 妊娠と内科合併症」カテゴリーアーカイブ

妊娠と気管支喘息

妊娠と呼吸器疾患の管理において大切なことは、胎児の酸素の状態を考慮することです。つまり、妊婦が低酸素に陥ると、胎児にも負担がかかってしまいます。その結果、妊娠合併症の増加、発育不良、早産・死産の増加などにつながってしまいます。妊娠中に低酸素に陥りやすい代表的な病気として、気管支喘息が挙げられます。

喘息はホルモンバランスにより悪化します。妊娠することで大きくホルモンバランスが変化しますので、喘息患者さんの約1/3が妊娠中に悪化するとされています。また、もともと喘息の持病がなくても、長引く咳・喘鳴 (ぜーぜー)・呼吸困難をはじめとした症状にて、新規に喘息や咳ぜんそくを発症することもあります。出産を終えると改善することが多いですが、次の妊娠でも同じようなことが起こる場合があり、後に本格的に喘息を発症することもあります。

喘息の一般論や治療については以前に記載させていただきましたので、詳しくはこちらもご参照下さい。吸入ステロイド薬の登場により、喘息治療の歴史が変わりました。2000年頃から一般的に使用されるようになり、ステロイドを吸入として用いることで、内服や点滴に比較し、安全に使用できるようになりました。それ以降、喘息コントロールの著しい改善をもたらし、喘息死も激減しています。

それでは、吸入とはいえステロイド、妊娠中に使用してよいのでしょうか? これは問題ありません。特にブデソニドというステロイドの安全性が高いとされ、これはパルミコートやシムビコートに含まれるものであり、これらの薬剤を中心に使用します。もちろん吸入ステロイド薬には、口内炎や声枯れなどの副作用がありますので、うがいなど基本的な対策は忘れないようにすることが大切です。なお、その他の内服薬剤についても安全性の高いものを選べば、妊娠中であっても使用することができます。一方、妊娠中に限ったことではありませんが、不要な薬剤をわざわざ使用する必要はありませんので、最低限の投薬を心がけたいと思います。

強調しますが、胎児の酸素の状態を考慮することが最も大切なことです。妊娠しているからと自己判断で吸入薬を止めてしまう、不慣れな医療従事者が中止を指示してしまう、これらにより喘息コントロールが悪化してしまうケースを数多く経験してきました。安全性の高い薬剤を選択して、きっちり吸入して、しっかり喘息をコントロールすること。できれば咳もおさまった状態で、穏やかに出産の日を迎えていただきたいと思います。

妊娠と内科合併症

妊婦が医療機関を受診した際に上乗せされる『妊婦加算』。社会問題となり、すっかりほとぼりが冷めた状態となっていましたが、再開の方向で検討に入ったとニュースになっています。すでに反対派がざわざわしているようですが、どうなることでしょう。

昨今、働く女性が増えたこともあり、晩婚化が進み、妊娠や出産も高齢化しています。35歳以上での出産を高齢出産といいますが、内科合併症・流早産・胎児低体重や胎児合併症の問題が増えてしまいます。高齢出産ではなくても一定の割合で起こるわけですが、そうなってしまった場合、ご自身を責めたりすることもあるでしょうし、何かのせいにしたくなることもあるかもしれません。あの時の検査のせいかも、あの時の薬のせいかも…。

A「何かあったら責任取れないから、産婦人科で診てよ。」
B「いやいや、何でも産婦人科に言われても困るよ。」
C「たらい回しにしないで!」
D「じゃあ、特別な配慮を設けて、皆で協力しながらやろうよ。」

妊婦加算とは、大雑把にいうとこういう流れから発案された制度でした。本来は、妊婦がより良い体制で診療を受けられるようにと配慮したもので、少子化対策の一つでもありました。しかし、妊婦に支払いを負わせるという点が、少子化に逆行すると批判されてしまいました。現在、制度の凍結により妊婦加算の支払い自体はしなくて済むようになっており、自分が解決したかのように振る舞う政治家もいますが、これからも誰かが診療していかなければならないという点においては、何も解決していないと思います。

さて当院にも、不妊治療中・妊婦・授乳婦の患者さんが通院されています。少しでも貢献できることがあればよいですが、内科合併症の中では、咳ぜんそく気管支喘息糖尿病甲状腺疾患については、配慮した対応ができると思います。それぞれについては、追って解説させていただきます。糖尿病・甲状腺疾患を担当する副院長は女性医師ですし、繊細なことも相談しやすいかもしれません。また薬剤師とも連携し、より安全性の高い薬剤の選択や、また最低限の投薬を心がけています。子供たちと将来のことを考えて、私たちでできることをひとつひとつ、やっていこうと思います。