「3. 呼吸器・アレルギー疾患」カテゴリーアーカイブ

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、名前の通りに、睡眠中に無呼吸を繰り返す病気です。その結果、様々な症状や合併症が引き起こされてしまいます。こちらは、『成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン』に従って診療します。

まず当たり前のことですが、眠っている間に起こっていることですので、患者さんご自身は覚えていません。この点が他の病気とは大きく異なります。起床してからの頭痛や、昼間の眠気など、睡眠中の障害の影響を受けて出てくる症状から、病気の存在を疑わないといけません。その他の方法としては、ご家族から情報を得ることですね。ご家族のいびきや無呼吸に気付いている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりに脂肪が多いと上気道は狭くなりますので、肥満と深く関係しています。以前、専門施設の見学をさせて頂いた際に、患者さんが「先生、この病気の人って、みんなよく似た体型だね。」と笑いながら話されていたことを思い出します。

診断方法としては、まず携帯型装置を貸し出し、ご自身でセットし、呼吸の状態を評価します (簡易検査)。さらに詳細な検査が必要な場合は、脳波・筋肉の動き・気流などの評価を行いますが (ポリソムノグラフィー:PSG)、こちらは1泊入院での検査になります。当院では施行できませんので、施行可能な施設を紹介させて頂きます。診断に至った場合、経鼻的持続陽圧呼吸療法 (Continuous Positive Airway Pressure:CPAP)の治療を導入します。CPAP療法とはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。

不安をあおるつもりは全くありませんが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、重症例ではより顕著であることが知られています。自覚症状を改善させるだけではなく、CPAP治療には予防的な意味合いもあり、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。

特に当院は、糖尿病メタボリック症候群脂質異常症の専門施設でもあり、こちらも肥満と関連しますので、心当たりのある方は、担当医までおっしゃって下さい。

2020.4.28 改

COPD (慢性閉塞性肺疾患)

COPD (慢性閉塞性肺疾患) とは、肺がんと並ぶ呼吸器タバコ病の代表です。Chronic Obstructive Pulmonary Disease (慢性閉塞性肺疾患)の頭文字を取ってCOPD (シーオーピーディー)です。

数年前からCMなどでもさかんに啓蒙活動が行われていますので、耳にされたこともあるかもしれません。しかし患者さんに「COPDって知っていますか?」とたずねても、知らないと言われることがほとんどです…。「肺気腫って知っていますか?」とたずねると、何となくわかってもらえます。COPDは、認知度という点では、まだまだですね。高いところから大きな声で叫んでも、多分届かない、そう思います。私なりの啓蒙活動としては、一人一人に丁寧に、こつこつお声掛けし、いつまでも継続することです。

さて、そんなCOPDですが、日本呼吸器学会から、『COPD診断と治療のためのガイドライン (第5版)』が発刊されており、これに沿った診療を行います。その病態ですが、タバコ煙を長期にわたり吸入することで、気管支や肺に慢性的な炎症が起こります。その結果、気管支の壁が厚くなり、逆に内腔側は狭窄してしまいます (①慢性気管支炎)。一方、肺の方では、肺胞が破壊され、肺全体がスカスカのスポンジのようになってしまいます (②肺気腫)。これらのため、せっかく呼吸をしても、空気の流れが邪魔されてしまい、気流閉塞や気流制限がかかってしまいます。やがて、咳・ゼーゼー・呼吸苦・労作時呼吸困難・階段や坂道を中心とした長距離の歩行困難などの症状につながります。

自覚症状の確認や、喫煙歴などの問診により、COPDを疑うことができます。指先の簡単なモニターで、酸素の値を測定することもできます。そして検査ですね。まず呼吸機能検査でCOPDと診断とし、その病期 (Ⅰ~Ⅳ期)を決定します。ここで私の診療の工夫ですが、画像検査により、患者さんご自身の肺の構造やCOPDによる構造破壊を、つまりどれだけ肺が壊れているかを見て頂くようにしています。残念ながら、壊れた肺は元には戻りませんので、残った肺でいかにやりくりするかをじっくり一緒に考えます。

ここで助けになるのが、気管支拡張薬です。吸入することで、気管支を拡張させ、残った肺をうまく使うことが可能になります。病気を理解して頂くことで、治療の動機付けやその継続につながるものと思います。当然ですが、禁煙もお願いしますね。

文章中に何度もCOPDと記載しました。少しは啓蒙できたでしょうか?

2020.4.28 改

気管支喘息

気管支喘息とは、“喘息 (ぜんそく) ” のことですね。最もよく知られた呼吸器疾患の一つかもしれません。日本アレルギー学会から、『喘息予防・管理ガイドライン2018』が発刊されており、これに沿った診療を行います。

ここでは、「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性を持った気道狭窄 (喘鳴、呼吸困難) やなどの臨床症状で特徴付けられる疾患」であると定義されています。ちょっと難しいですね…。もっと簡単に、①気管支に炎症が起こる→②粘膜がむくむ→③気道が狭くなる→④咳・ゼーゼー・呼吸苦の症状が出る。この流れを断つには、①の炎症を抑えないといけないわけです。

喘息の管理目標は、下記とされています。

Ⅰ. 症状のコントロール
 ① 気道炎症を制御する。
 ② 正常な呼吸機能を保つ。
Ⅱ. 将来のリスク回避
 ① 呼吸機能の経年低下を抑制する。
 ② 喘息死を回避する。
 ③ 治療薬の副作用発現を回避する。

よく見て頂きたいのですが、喘息を治すことは、目標の中には入っていません。私が最もお伝えしたいこと、残念ながら、“基本的には喘息は治らない病気である” ということです。私たちは、根本的に治す治療ではなく、炎症を抑える治療をしているのです。上述の管理目標の各項目に「炎症を抑えて、」という前置きを入れると、よりわかりやすくなると思います。

ここで治療の中心となるのは、吸入ステロイド薬です。2000年頃から一般的に使用されるようになり、喘息治療の歴史が変わりました。症状を著しく改善させることができ、喘息死も激減しています。

これらの説明を怠ると、患者さんとすれ違ってしまいます。「先生いつまでこの吸入するのですか?」、「調子がいいからもうやめました。」、自己判断で定期通院をやめてしまうこともあります。しばらくはいいかもしれませんが、高率に再燃してしまいます。ちょっとした説明かもしれませんが、病気を理解して、信頼関係があって、初めて治療は成功するものと思います。

2020.4.28 改

咳嗽 (せき)

咳嗽 (がいそう) とは、咳 (せき) のことですね。世界中で受診理由として、最も頻度が高い症候の1 つだそうです。日本呼吸器学会からも、『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019』が発刊されているほどです。ここではその詳細に関しては割愛しますが、つまりは系統立てて診療にあたりましょうという指針です。咳止めだけでは、少し工夫が足りません。

特に、”長引く咳” には注意が必要です。気管支や肺に障害が起こると咳は誘発されますが、その原因として、アレルギー・気管支喘息感染症間質性肺炎肺がん喫煙・副鼻腔気管支症候群 (後鼻漏)・胃食道逆流症・薬剤・職業・精神面など、たくさん挙がります。私の考えとして、最も大切なことは問診であり、何かしらのヒントが得られます。

次いで聴診と各種検査になりますが、アレルギーや喘息の診断のために、呼気NO検査や呼吸機能検査を、また感染症や肺がんなどを見落とさないように、レントゲンやCTによる画像検査を行います。必要に応じて、原因アレルゲン検査も行います。得られた情報をもとに、まず原因を断ち、吸入ステロイド薬・吸入気管支拡張薬・抗アレルギー薬・抗菌薬・去痰剤などを中心とした治療を行います。

実は私も、”長引く咳” の症状がありますが、吸入ステロイド薬によりピタッと症状がおさまります。咳の症状が長く持続すること、それは私たちの想像以上に、患者さんにとって苦痛であり、生活の質を落とすものです。症状の改善が得られたとき、どの患者さんも大変喜ばれます。一方、ありとあらゆる治療をしても改善しない場合もあり、難しい側面もあります。そんな場合も、少しでも症状の軽減ができるよう、粘り強い診療を心がけたいと思います。

「私は昔から気管支が弱いから…」 咳の症状を放置していませんか?

2020.4.28 改