アナフィラキシー (症状と対策)

アナフィラキシーの一般論については、別頁をご参照下さい。さて、前述しましたが、生命に危険を与え得る過敏反応との定義の通りで、アナフィラキシーはアレルギー疾患の中でも最も重篤なものです。全身性にアレルギー症状が出ることが多く、皮膚・粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状がその中心になります。

皮膚症状としては、顔や全身の発疹・紅潮・かゆみがあり、粘膜症状としては、鼻や喉の粘膜の腫れがあり、「急に鼻が詰まった」「首を絞められているようだった」と表現された方もみえ、前兆の一つです。呼吸器症状としては、こちらも粘膜症状によるものですが、気管支粘膜に浮腫が起こります。すると、気道が狭くなるため、咳、ゼーゼー (喘鳴)、呼吸困難となり、窒息に近い状態に陥ります。また循環症状としては、血圧を維持できなくなるため、意識障害、失神などの状態となります。

そして、これらの症状が、数分から数時間以内に起こり、死亡に至ることがあります。

アナフィラキシーの診療において最も大切なことは初期対応になります。発症する場所は選べませんので、対応をイメージしておいていただく必要があります。

① まず状態を確認する。
② 救急要請する。
エピペンを携帯しているのであれば、筋肉注射する。
④ 患者を仰向けにして足を高くする。嘔吐するなら横を向ける。
(救急隊)
⑤ 高流量の酸素を投与する。
⑥ 点滴ルートを確保する。
⑦ 状態によっては心肺蘇生をする
(病院)
⑧ アドレナリン、ステロイド、ヒスタミン拮抗薬などによる救急治療を開始する。
⑨ 経過観察のため入院。

これで終わりではありません。「同じことを起こさせないように対策すること」の必要性を強調したいと思います。1度目は仕方ないが、2度目は防いであげなければなりません。このあたりは救急の先生方とも協力して対策を考えたいと思っています。下記などの問い合わせがこの1年間で20件近くありました。

「入院したけど、今後どうしたらいいですか?」
「アナフィラキシーの原因を調べて下さい。」
「蜂の抗体を調べてもらえますか?」
「エピペンを処方してもらえますか?」

1つ目の対策は、アナフィラキシーの原因の検索です。状況から明らかに原因を特定できる場合もあれば、居酒屋などで複数の食物摂取後の発症など、原因がわからない場合があります。詳しい問診や原因アレルゲン検査により、できる限り原因を調べる必要があり、今後の発症予防につながります。

2つ目の対策は、アドレナリン自己注射製剤である“エピペン”を携帯することです。有事の際には自己注射し、かつ救急要請することで、命の危険を回避することができます。

最後にアナフィラキシーの啓発です。日本アレルギー学会にアナフィラキシー啓発サイトがあり、『アナフィラキシーガイドライン』も公開されていますので、一度ご覧いただきたいと思います。心肺蘇生術と同じように、私たち医療従事者だけではなく、一般の方にも認識してもらっておいた方が、救命率が上昇すると思いますので、ご協力をお願いしたいと思います。