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急性/慢性肺感染症

肺の感染症についてです。急性 (短期間の経過)と、慢性 (長期間の経過)にわけて考えます。急性の肺感染症とは、皆様ご存知の ”肺炎” ですね。一方、慢性の肺感染症、こちらは知らない方も多いのではないでしょうか。肺に菌が長く住み着いてしまうことがあり、 ”慢性下気道感染症” といいます。肺は気道を通じて、外界と交通した臓器なので、いろんな感染症に脅かされます。

まず ”肺炎” についてですが、日本呼吸器学会から、『成人肺炎診療の治療ガイドライン2017』が発刊されていますので、これに沿った診療を行います。どこで発症したかにより、「市中肺炎」、「院内肺炎」、「医療・介護関連肺炎」に分類されます。治療の標的となる菌の種類が異なるため、抗生剤の選択などの治療戦略も自ずとかわってきます。

軽症例は外来で治療できますが、重症例は入院が必要になります。外来治療か入院治療かは、主には呼吸の状態で判断することが多いです。酸素投与が必要なら、基本的には入院ですね。肺炎に罹患しても、適切な治療を受ければ多くの場合は改善しますが、高齢者や基礎疾患のある患者さんでは命に関わることもあります。高齢化社会を迎えた現在、死因の第3位になっています。誤嚥の対策や、ワクチン接種による肺炎の予防も大切ですね。

次に “慢性下気道感染症” です。中高年の女性に多いです。こちらの厄介な点は、一旦肺に菌が住み着くと、なかなか出て行ってくれないことです。生涯のお付き合いになることがほとんどで、菌は増殖し、少しずつ気管支や肺の構造を破壊します。その結果、気管支拡張や空洞を形成し、咳・痰・血痰 (喀血)・微熱・痩せなどの症状を引き起こします。

その原因菌としては、一般細菌 (インフルエンザ桿菌・緑膿菌など)や非結核性抗酸菌が多いですが、結核や真菌 (カビ)が紛れていることも多く、注意が必要です。痰を調べたり、必要に応じて気管支鏡を行うことで、菌の種類を同定します。治療はマクロライド療法 (エリスロマイシンやクラリスロマイシン、少量、2年間など)が中心となりますが、菌の種類によって治療内容を少しずつ変更します。

医療従事者からの認識が薄いことも問題点であり、 ”慢性下気道感染症 ⇒ 癌ではない ⇒ 放置して良い” と誤解され、また画像検査でも、 “陳旧性変化 (古い傷跡)” として扱われてしまうこともあります。特に、黄・緑・褐色の痰の症状が長引いている方、一度精査をおすすめします。