「3. 呼吸器・アレルギー疾患」カテゴリーアーカイブ

咳796人、明日の診療を思う

呼春の森診療所が開院して1年が経過しました。そこで私たちの診療を振り返ってみました。咳を主な訴えとして受診された患者さんは796人みえました。当院の受診動機として最も多いものになります。まず、多くの患者さんが咳で困っていることがよくわかりました。そして、私たち呼吸器内科の診療が行き届いていない現状を知り、改めて力不足を実感しました。

さて、咳を訴えて来院された796人の診断の内訳ですが、下記となっています。

当院では、他院の受診がすでに済んでおり、それでも症状が持続するため来院される方が多く、そういった点からは少し偏りのある結果になっているかもしれません。一般には、咳といったら風邪ですよね。咳ぜんそく気管支喘息が約70%を占めており、アレルギーによる咳が非常に多いとの結果になっています。ここで、約30%はその他の咳、つまりアレルギーによる咳ではない、ということを心にとめなければなりません。

治療方針が大きく異なりますので、アレルギーによる咳とその他の咳を分けて考える必要があります。当院では、①呼気NO検査、②呼吸機能検査、③レントゲンの3点セットを行い、診断するようにしています。①ではアレルギーの有無を、②では呼吸機能への影響を、③はその他の病気の除外を、それぞれ目的としています。なお、原因アレルゲン検索などの採血や胸部CTは必要に応じて追加するようにしています。

私もそうですが、咳が長引くと、けっこうしんどいです。たくさんの患者さんの声も聞いてきました。夜眠れない、会話ができない、仕事ができない、講演ができない、読み聞かせができない、笛が吹けない、コーラスができない、大事な会に出られない、コンサートに行けない、冠婚葬祭で困る、連続すると息ができない、連続すると嘔吐する、咳のせいで肋骨骨折や損傷に至ってしまうケースも20例近くありました。また多くの患者さんは、咳に対する他人の目線を気にされていました。

咳エチケットという言葉があります。インフルエンザなどの感染症で咳をしている場合、マスクをつけるなどして、他人に感染させないようにする対策です。でも、アレルギーで咳が起こっている患者さんにとってはどうなのでしょう? 感染させる危険もないのに、そういう目で見られ、肩身の狭い思いをしています。こういった方がたくさんいることを、私が伝えていきたいと思います。

咳ぜんそくや気管支喘息は、吸入ステロイド薬や抗アレルギー薬の内服で治療を行います。775例に吸入薬を処方しましたが、336例 (43%)は症状が消失し、通院の卒業に至りました。348例 (45%)は治療を行うことで、症状を軽減することができていますが、残念ながら、治療を止めることはできません。アレルギーは病気ではありますが、体質のようなところがあり、個人差や症状の波があり、根本的な治療ができないのがつらいところです。中には全く症状がおさまらない方もみえるのですが、患者さんと一緒に考えながら、根気強く診療していきたいと思います。

治療期間に関しては、実は医学的な根拠が定まっていません。個人の考えとして、①一時的、②季節性、③通年性、④再発性の4群に分けて考えるようにしています。①や②はある程度の期間のみの治療で済むことが多いです。③は残念ながら継続的な治療が必要です。④は程度や頻度によりますが、頻繁に再発するようであれば、③と同様に継続的な治療が必要になります。

また最後に、自己判断で通院を止めてしまった方が91例 (12%)いました。多くは良くなっているものと信じたいですが、再発や増悪、喘息発作への進展につながりますので、とても心配です。一度投げ出してしまった方は、再来院しづらいのかもしれませんが、こちらとしては全く問題ございませんので、またご連絡下さい。一旦卒業できても再燃する場合がありますので、ご連絡下さい。患者さんが思うよりもずっと長い目線で診療しているつもりです。良くなって頂きたいです。

以上、明日の診療につなげたいと思います。

エピペン

エピペンとは、アドレナリン自己注射薬であり、アナフィラキシーがあらわれたときに使用します。症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤であり、使用と同時に救急要請することが重要です。アナフィラキシーの一般論や、症状と対策については別頁をご参照下さい。

まず、どのような人に携帯が望まれるのでしょうか。微量のアレルゲンでアナフィラキシーを誘発する場合、ショックを誘発しやすい食物 (ナッツ類、魚介、牛乳、ソバ、卵、小麦など)がアレルゲンとなる場合、アナフィラキシーを繰り返す場合などが挙がります。また気管支喘息を持病とする場合も危険性が高く、携帯が望まれます。蜂刺傷の場合は、約20%でIgE抗体が産生されると言われており、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチに対するIgE抗体を測定し、陽性であった場合は、やはり携帯すべきだと思います。

それではエピペンを使用すべきタイミングについてです。下記の症状が1つでもあらわれたら使用すべきとされています。

●消化器症状 繰り返す嘔吐、持続する腹痛
●呼吸器症状 胸が締め付けられる、激しい咳、ゼーゼー、呼吸苦
●循環器症状 顔面・唇・爪の蒼白、意識障害

例えば食物によるアナフィラキシーの場合、発現から心停止までわずか30分とされており、速やかな対応が望まれます。もちろん、もっと急速な場合もあります。実際の注射の手順に関しては下記になりますが、文章よりも動画などの方がわかりやすいですので、こちらもご参照下さい。

① 打つ場所 (ふとももの外側)を確認する
② エピペンのカバーを開けて取り出す
③ 青い安全キャップを外す
④ カチッと音がするまで押しつける
⑤ 抜き取り、オレンジのカバーが伸びていることを確認する
⑥ 注射部位をもむ
⑦ 救急要請する

最後に保管や管理ですが、いつでもエピペンを注射できるように、日頃からエピペンの適切な管理を心がけてください。特に下記に注意していただきたいと思います。

・自宅では手の届くところに置く
・外出時には携帯する
・携帯用ケースに入れて保存
・15〜30℃での保存が望ましい
・変色や沈殿に注意する
・期限が切れる前に、再処方を受ける
・期限が切れたら、医療機関で破棄する

アナフィラキシー (症状と対策)

アナフィラキシーの一般論については、別頁をご参照下さい。さて、前述しましたが、生命に危険を与え得る過敏反応との定義の通りで、アナフィラキシーはアレルギー疾患の中でも最も重篤なものです。全身性にアレルギー症状が出ることが多く、皮膚・粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状がその中心になります。

皮膚症状としては、顔や全身の発疹・紅潮・かゆみがあり、粘膜症状としては、鼻や喉の粘膜の腫れがあり、「急に鼻が詰まった」「首を絞められているようだった」と表現された方もみえ、前兆の一つです。呼吸器症状としては、こちらも粘膜症状によるものですが、気管支粘膜に浮腫が起こります。すると、気道が狭くなるため、咳、ゼーゼー (喘鳴)、呼吸困難となり、窒息に近い状態に陥ります。また循環症状としては、血圧を維持できなくなるため、意識障害、失神などの状態となります。

そして、これらの症状が、数分から数時間以内に起こり、死亡に至ることがあります。

アナフィラキシーの診療において最も大切なことは初期対応になります。発症する場所は選べませんので、対応をイメージしておいていただく必要があります。

① まず状態を確認する。
② 救急要請する。
エピペンを携帯しているのであれば、筋肉注射する。
④ 患者を仰向けにして足を高くする。嘔吐するなら横を向ける。
(救急隊)
⑤ 高流量の酸素を投与する。
⑥ 点滴ルートを確保する。
⑦ 状態によっては心肺蘇生をする
(病院)
⑧ アドレナリン、ステロイド、ヒスタミン拮抗薬などによる救急治療を開始する。
⑨ 経過観察のため入院。

これで終わりではありません。「同じことを起こさせないように対策すること」の必要性を強調したいと思います。1度目は仕方ないが、2度目は防いであげなければなりません。このあたりは救急の先生方とも協力して対策を考えたいと思っています。下記などの問い合わせがこの1年間で20件近くありました。

「入院したけど、今後どうしたらいいですか?」
「アナフィラキシーの原因を調べて下さい。」
「蜂の抗体を調べてもらえますか?」
「エピペンを処方してもらえますか?」

1つ目の対策は、アナフィラキシーの原因の検索です。状況から明らかに原因を特定できる場合もあれば、居酒屋などで複数の食物摂取後の発症など、原因がわからない場合があります。詳しい問診や原因アレルゲン検査により、できる限り原因を調べる必要があり、今後の発症予防につながります。

2つ目の対策は、アドレナリン自己注射製剤である“エピペン”を携帯することです。有事の際には自己注射し、かつ救急要請することで、命の危険を回避することができます。

最後にアナフィラキシーの啓発です。日本アレルギー学会にアナフィラキシー啓発サイトがあり、『アナフィラキシーガイドライン』も公開されていますので、一度ご覧いただきたいと思います。心肺蘇生術と同じように、私たち医療従事者だけではなく、一般の方にも認識してもらっておいた方が、救命率が上昇すると思いますので、ご協力をお願いしたいと思います。

アナフィラキシー (一般論)

日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインによると、アナフィラキシーとは「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危険を与え得る過敏反応」と定義されています。「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックといいます。

まず簡単に、アレルギーについて触れたいと思います。アレルギーを引き起こす物質を、”アレルゲン”または “抗原”と呼びます。私たちにとって最も身近なアレルギー疾患は、花粉症ですが、この場合、スギ花粉やヒノキ花粉が ”アレルゲン”になるわけですね。その他のアレルギー疾患としては、蕁麻疹・アトピー性皮膚炎に代表されるアレルギー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息などが挙がり、今回のテーマのアナフィラキシーもここに含まれます。

また、アレルギー疾患は、主に眼・鼻・皮膚・口・気管支で起こります。これらの臓器の特徴は、外界と接していることです。つまり外界からのアレルゲンにさらされやすく、トラブルが起こりやすいわけです。眼に入る、鼻に入る、皮膚に接する、食べる、吸い込むことによって、発症してしまいます。

そもそも無害であるはずの物質に対して、どうしてアレルギー反応が起こってしまうのでしょうか。アレルゲン曝露によりアレルギーが生じる状態になることを ”感作 (かんさ)”と呼びます。感作の成立には、①体側の要因、②環境の要因、③感作経路の3つが重要とされています。感作アレルゲンは患者さんによって大きく異なりますが、成人では、花粉、ダニ、ホコリ、食物 (小麦・魚類・甲殻類・果物)、ペット、カビが多いです。

これらのアレルギー反応に関与するのが “IgE抗体”であり、肥満細胞・好塩基球・炎症性物質を介して、アレルギーを起こします。各種アレルゲンに対するIgE抗体を測定することで、「何に対してアレルギーを持っているのか」を調べることができます。これらは、血液検査で、簡単に測定することができますので、アレルゲンを回避するという点において非常に役立ちます。詳しくは原因アレルゲン検査の頁もご参照下さい。

アナフィラキシーの多くは、IgE抗体を介したアレルギー反応により発症します。例えば、1回目蜂に刺される→蜂に対するIgE抗体を獲得する (感作)→2回目蜂に刺される→IgE抗体を介してアナフィラキシーを発症する。このような流れが一般的です。ここで注意が必要ですが、IgE抗体が関与せず発症する場合もあり、薬剤や造影剤などによるアナフィラキシーに代表され、この場合、初回投与でも発症する可能性があります。

さて、どのような人に起こりやすいのでしょう。気管支喘息を持っている人はアナフィラキシーの重篤化の危険が高いとされています。特にコントロール不良例でリスクが高く、普段から喘息のコントロールを心がけましょう。

また運動による誘発にも注意が必要です。食物依存性運動誘発アナフィラキシー (food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIA)と呼ばれ、原因食物の摂取または運動のそれぞれ単独では症状は出ないが、双方がそろうとアナフィラキシーが誘発される疾患があります。例えば、小麦を食べる→運動する→アナフィラキシーを発症する。この場合、運動2時間前は原因食物の摂取禁止などの指導をすることで防ぐことができます。

ここまでが、アナフィラキシーの一般論でした。アナフィラキシーの症状と対策については、別頁をご参照下さい。

蜂とアレルギー

中日新聞の生活面の「つなごう医療」に、取材記事を掲載していただきました (2019.8.6)。テーマは「蜂とアレルギー」です。

梅雨が明け、急激に暑くなり、蜂が活発に活動しています。庭作業が日課の私も、頻繁に蜂を見るようになりました。アシナガバチが多いですが、時にスズメバチも飛来しています。特にスズメバチは攻撃性が高く、身の危険を感じます。

さて、皆さまご存じの通りで、蜂に刺されると命にかかわることがあります。全身の皮膚症状に加えて、呼吸困難や血圧低下といった生命に危機を与え得る症状が出ることを “アナフィラキシー”と言います。蜂に刺されたことによる死亡者数は、年間20人ほどとされています。

アナフィラキシーの診療において最も大切なことは、救急外来での初期診療になります。いわゆる救命処置ですね。しかし、ここで終わりではありません。「同じことを起こさせないように対策すること」の必要性を強調したいと思います。

一つ目は原因の検索です。IgE抗体という、アレルギー反応を引き起こす抗体があり、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチについて、血液検査で簡単に測定することができます (ハチアレルギー検査)。蜂に刺されたことがある人、アレルギー反応が強かった人、住まいや職業で刺される可能性が高い人は、一度測定されるとよいと思います。

二つ目は、アドレナリン自己注射製剤である “エピペン”を携帯することです。有事の際には自己注射し、かつ救急要請することで、命の危険を回避することができます。

これらの対策に加え、そもそも蜂に刺されないようにすることも大切です。実は、今回の取材を受け、蜂のことばかり考えているときに、何気なく診療所の軒下を見てみると、まさかの蜂の巣を発見しました。巨大なスズメバチに後ずさりし、直ちに専門業者に駆除していただきました。

皆さまも、ベランダや軒下のチェックをお忘れなく!

記事リンク 『2度目以降 急に悪化も ハチの毒』

妊娠と気管支喘息

妊娠と呼吸器疾患の管理において大切なことは、胎児の酸素の状態を考慮することです。つまり、妊婦が低酸素に陥ると、胎児にも負担がかかってしまいます。その結果、妊娠合併症の増加、発育不良、早産・死産の増加などにつながってしまいます。妊娠中に低酸素に陥りやすい代表的な病気として、気管支喘息が挙げられます。

喘息はホルモンバランスにより悪化します。妊娠することで大きくホルモンバランスが変化しますので、喘息患者さんの約1/3が妊娠中に悪化するとされています。また、もともと喘息の持病がなくても、長引く咳・喘鳴 (ぜーぜー)・呼吸困難をはじめとした症状にて、新規に喘息や咳ぜんそくを発症することもあります。出産を終えると改善することが多いですが、次の妊娠でも同じようなことが起こる場合があり、後に本格的に喘息を発症することもあります。

喘息の一般論や治療については以前に記載させていただきましたので、詳しくはこちらもご参照下さい。吸入ステロイド薬の登場により、喘息治療の歴史が変わりました。2000年頃から一般的に使用されるようになり、ステロイドを吸入として用いることで、内服や点滴に比較し、安全に使用できるようになりました。それ以降、喘息コントロールの著しい改善をもたらし、喘息死も激減しています。

それでは、吸入とはいえステロイド、妊娠中に使用してよいのでしょうか? これは問題ありません。特にブデソニドというステロイドの安全性が高いとされ、これはパルミコートやシムビコートに含まれるものであり、これらの薬剤を中心に使用します。もちろん吸入ステロイド薬には、口内炎や声枯れなどの副作用がありますので、うがいなど基本的な対策は忘れないようにすることが大切です。なお、その他の内服薬剤についても安全性の高いものを選べば、妊娠中であっても使用することができます。一方、妊娠中に限ったことではありませんが、不要な薬剤をわざわざ使用する必要はありませんので、最低限の投薬を心がけたいと思います。

強調しますが、胎児の酸素の状態を考慮することが最も大切なことです。妊娠しているからと自己判断で吸入薬を止めてしまう、不慣れな医療従事者が中止を指示してしまう、これらにより喘息コントロールが悪化してしまうケースを数多く経験してきました。安全性の高い薬剤を選択して、きっちり吸入して、しっかり喘息をコントロールすること。できれば咳もおさまった状態で、穏やかに出産の日を迎えていただきたいと思います。

最新型CPAP療法

皆さま、これが何かわかりますでしょうか? 最新型の睡眠時無呼吸症候群の治療装置 (CPAP療法)です。あまりの小ささに、私もはじめて見たときには驚きました。もちろんこれにエアチューブと電源コードがつながるわけですが、それでも小さいですよね。本体は13.6cm (幅) ×8.4cm (奥行) ×5.2cm (高さ)、300gしかありません。まさに手のひらサイズです (写真は私の手です 笑)。

従来型の装置と比べると、加湿器とモニターがありません。加湿器は加温加湿フィルターで代用し、モニターはスマートフォン (アプリ連携、Bluetooth対応)で代用します。肝心の加圧機能は従来型と遜色なく、高機能が維持されています。

医療は日進月歩で進歩しますが、こういった医療機器はより顕著です。旅行や出張時にも便利ですし、自宅での設置でも場所を取りません。気になる費用も従来型と変わりありません。

睡眠時無呼吸症候群の診療において重要なことは、CPAP療法を継続的に行うことと、合併する生活習慣病を管理していくことです。患者さんの生活スタイルに合わせて、こういった便利な機種を使っていくことも、継続率の向上につながると思います。

睡眠時無呼吸症候群やCPAP療法の一般論については以前に記載させていただきましたので、こちらもご参照下さい。生活習慣病の管理も含め、専門的な管理をご希望の方は、当院までお問合わせ下さい。

花粉症

今日は花粉症のお話です。インフルエンザが記録的な流行をみせる中、花粉症まで重なってきます。せっかく春が近づいているのに、憂鬱になりますよね。

花粉症とは、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称であり、主にアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎のことをいいます。咳ぜんそく気管支喘息にも悪影響しますので注意が必要であり、当院でも積極的に花粉症の治療を行っています。花粉症は、『鼻アレルギー診療ガイドライン2016』 などに準じて診療を行います。

日本人の約5人に1人は花粉症と言われています。2月中旬からの飛散が予測されていますが、花粉が飛び始めてすぐに症状が出る人もいれば、たくさん飛んではじめて症状が出る人もいます。病状も同じように、軽い場合、重い場合があり、さまざまです。つまり同じ花粉症でも、個人差があるわけです。

外から侵入してきた花粉に対して、体が ”異物” と認識することで、アレルギー反応が起ります。その結果、目のかゆみ・くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が引き起こされてしまいます。また、あまり知られていませんが、頭痛・微熱・倦怠感などを伴うこともあります。花粉は粒子が大きいため、目や鼻に付着し、気管支や肺の奥までは入らないとされていますが、咳や喘息症状の悪化もしばしば伴います。これは、目や鼻でアレルギー性炎症のスイッチが入ってしまうと、気管支や肺まで炎症が伝わってしまうからです。

私は、何の病気 (癌・感染症・アレルギーなど) であっても、”全身治療” と ”局所治療” に大別して診療にあたります。これを組み合わせて、病気を抑え込みにかかります。前者は血液の流れにのって全身に広がってくれるもの、後者はその場所で特にパワーを発揮してくれるもの。花粉症においては、抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン薬の抗アレルギー薬の内服が前者にあたり、点眼薬・点鼻薬が後者にあたります。また、咳や喘息症状を伴う場合は、吸入ステロイド薬も併用します。

「治療の開始は、花粉の飛びはじめに」 と言われています。三重県では2月上旬が望ましいでしょう。最近の抗アレルギー薬は、眠気などの副作用も少なく、かつ効果も高くなってきています。また、点鼻薬や点眼薬も当院で処方できますので、遠慮なくお申し付け下さい。なお、今季はシーズンを逸してしまいましたが、来季に向けてアレルゲン免疫療法を行うこともできます。

最後にご自身での対策として、メガネ・マスクの着用、外出を控える、花粉のつきやすい衣類を控える、衣服を払ってから入室する、こまめに掃除をするなどがあります。いずれも抗原回避が目的になりますので、ぜひお気を付け下さい。

アレルギーポータル

2018年10月に、厚生労働省と日本アレルギー学会により、『アレルギーポータル』というサイトが公開されましたが、皆さんご存知でしょうか? アレルギー疾患対策基本法に従って、国民に正しい知識を伝えることが目的とされています。

トップページには、「アレルギーについて、正しい知識を身につけて疾患の治療、管理、予防をしましょう」と記されており、アレルギー疾患の特徴・症状・重症度・治療方法などの基礎知識について、とてもわかりやすく解説されています。また、レイアウトやカラーもきれいで、直感的にページを閲覧することができます。

都道府県におけるアレルギー疾患の医療提供体制整備もすすめられていますが、アレルギーポータルの三重県の医療機関情報ページ (アレルギー専門医一覧) に、当院も掲載されています。当院が担わなければならないのは、成人喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーやアナフィラキシーの管理 (原因アレルゲン検索エピペン処方) などになります。

中でも呼吸器疾患の代表である、”気管支喘息” の診療においては、地域の中心的な役割を担えるようにならなければならないと考えています。①適切な診断、②吸入薬を中心とした適切な治療、③患者さんにあった吸入器の選択、④治療継続の必要性の理解、⑤治療介入後のコントロール状況の把握、⑥他の呼吸器疾患の除外など、挙げれば切りはありませんが、とにかく患者さんには、安心して診療を受けていただけるよう努めてまいりたいと思います。

アレルギーポータルを活用し、正しい知識を身につけることで、より良い診療を受けて頂くことが可能になると思います。患者さんだけではなく、医療従事者の方も、ぜひ一度ご覧下さい。

呼気NO検査

一酸化窒素 (nitric oxide:NO) は、生体内で産生され、多彩な作用を示すことが知られています。アレルギーに関連した咳嗽気管支喘息の患者さんにおいて、気道で ”炎症” が起こり、その病態を引き起こしていることはこれまでも述べてきました。吸入ステロイド剤を中心とした治療により、この ”炎症” を抑えることで、咳や喘息の症状は軽快するわけです。

体内の炎症を起こす物質 (炎症性サイトカイン) により、気道の上皮細胞や炎症細胞が刺激されると、多量のNOが産生されることがわかっています。NOはガスであり、吐いた息の中 (呼気中) に排出されますので、専用の測定器を用いて呼気中のNO濃度を測定することで、気道炎症の有無を評価することが可能となっています。つまり、息を吐くだけで、炎症があるかないかがわかります。

実際の測定は、少しコツがいるものの、非常に簡単です。大きく息を吸った後、測定器に備え付けられたマウスピースをくわえ、10秒ほどゆっくり息を吐いていただきます。ゆっくり息を吐くときに、一定の流量を保つことがポイントであり、早く吐きすぎると値が低く、遅すぎると高くなり誤差が生じてしまいます。

測定値はppb単位で表示されます。結果は、用いる測定器により若干の差が出てしまうことも知られていますが、2018年3月に日本呼吸器学会が発刊した「呼気NO測定ハンドブック」によると、下記の基準とされています。

●健康な成人の日本人 呼気NO濃度
・平均値 15 ppb
・正常上限値 37 ppb
●喘息患者 呼気NO濃度
・22 ppb以上 喘息の可能性が高い
・37 ppb以上 ほぼ確実に喘息

ここで私の考えですが、呼気NO濃度の実測値 (絶対値) は少し余裕をもって解釈したいと思っています。測定器の種類や呼気流速による誤差の他にも、呼気NO濃度が低下する因子として、喫煙・呼吸機能検査施行後・ステロイド薬の使用などが挙げられ、呼気NO濃度が上昇する因子として、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・急性感染症などがあります。ある程度の誤差やばらつきを考慮し、例えば測定結果が21ppbであった場合も、「22ppb未満だから絶対に喘息ではない」と解釈するのではなく、「だいたい22ppbだし、むしろ喘息の可能性もある」と解釈すると良いかもしれません。

さて、もう1点大事な点ですが、呼気NO検査において、過去の値と比較をすること (相対値) はとても有意義です。吸入ステロイド剤などによる治療を行うことで、鋭敏に反応し、多くの場合、呼気NO濃度は低下します。経験的には、呼気NO濃度が下がっていれば、基本的には治療は効いていると判断してよさそうです。逆に値が上昇してくる場合、病状の悪化や、患者さんが治療をさぼっているなどの場合もあるので、管理に用いることができます。

そもそも気管支喘息は、呼気NO検査だけで診断するものではありませんが、上述のように、診断の助けとなり、その後の管理にも有意義です。「えっ、もう終わりなの?」といった簡単な検査ですが、呼吸器内科診療において、なくてはならない存在になってきていますので、必要に応じて施行させていただきたいと思います。