「3. 呼吸器・アレルギー疾患」カテゴリーアーカイブ

呼気NO検査

一酸化窒素 (nitric oxide:NO) は、生体内で産生され、多彩な作用を示すことが知られています。アレルギーに関連した咳嗽や気管支喘息の患者さんにおいて、気道で ”炎症” が起こり、その病態を引き起こしていることはこれまでも述べてきました。吸入ステロイド剤を中心とした治療により、この ”炎症” を抑えることで、咳や喘息の症状は軽快するわけです。

体内の炎症を起こす物質 (炎症性サイトカイン) により、気道の上皮細胞や炎症細胞が刺激されると、多量のNOが産生されることがわかっています。NOはガスであり、吐いた息の中 (呼気中) に排出されますので、専用の測定器を用いて呼気中のNO濃度を測定することで、気道炎症の有無を評価することが可能となっています。つまり、息を吐くだけで、炎症があるかないかがわかります。

実際の測定は、少しコツがいるものの、非常に簡単です。大きく息を吸った後、測定器に備え付けられたマウスピースをくわえ、10秒ほどゆっくり息を吐いていただきます。ゆっくり息を吐くときに、一定の流量を保つことがポイントであり、早く吐きすぎると値が低く、遅すぎると高くなり誤差が生じてしまいます。

測定値はppb単位で表示されます。結果は、用いる測定器により若干の差が出てしまうことも知られていますが、2018年3月に日本呼吸器学会が発刊した「呼気NO測定ハンドブック」によると、下記の基準とされています。

●健康な成人の日本人 呼気NO濃度
・平均値 15 ppb
・正常上限値 37 ppb
●喘息患者 呼気NO濃度
・22 ppb以上 喘息の可能性が高い
・37 ppb以上 ほぼ確実に喘息

ここで私の考えですが、呼気NO濃度の実測値 (絶対値) は少し余裕をもって解釈したいと思っています。測定器の種類や呼気流速による誤差の他にも、呼気NO濃度が低下する因子として、喫煙・呼吸機能検査施行後・ステロイド薬の使用などが挙げられ、呼気NO濃度が上昇する因子として、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・急性感染症などがあります。ある程度の誤差やばらつきを考慮し、例えば測定結果が21ppbであった場合も、「22ppb未満だから絶対に喘息ではない」と解釈するのではなく、「だいたい22ppbだし、むしろ喘息の可能性もある」と解釈すると良いかもしれません。

さて、もう1点大事な点ですが、呼気NO検査において、過去の値と比較をすること (相対値) はとても有意義です。吸入ステロイド剤などによる治療を行うことで、鋭敏に反応し、多くの場合、呼気NO濃度は低下します。経験的には、呼気NO濃度が下がっていれば、基本的には治療は効いていると判断してよさそうです。逆に値が上昇してくる場合、病状の悪化や、患者さんが治療をさぼっているなどの場合もあるので、管理に用いることができます。

そもそも気管支喘息は、呼気NO検査だけで診断するものではありませんが、上述のように、診断の助けとなり、その後の管理にも有意義です。「えっ、もう終わりなの?」といった簡単な検査ですが、呼吸器内科診療において、なくてはならない存在になってきていますので、必要に応じて施行させていただきたいと思います。

アレルゲン免疫療法

“アレルゲン免疫療法” をご存知でしょうか? 近年、舌下薬を用いることができるようになり、”舌下免疫療法” とも呼ばれます。季節性アレルギー性鼻炎 (スギ花粉症) や、通年性アレルギー性鼻炎 (ダニアレルギー) を対象とした治療であり、アレルギーの原因であるアレルゲンを少しずつ体に投与することで、体を慣らして、根本的な改善を期待する治療方法です。現在、”スギ花粉” と ”ダニ” に対する治療が保険適応となっており、その治療指針として、「スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き」、「ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き」が日本アレルギー学会からそれぞれ発刊されています。

アレルギーを根本から改善することが期待できるという点で、一般的な薬物療法とは一線を画すものでありますが、まだまだ認知度も低いと思います。主に花粉症の治療方法ですので、耳鼻科での取り扱いが多くなりますが、他の診療科では医師であっても存在を知らないことも多いと思います。よって、積極的に周知していくことも、私たちアレルギー専門医の役目であります。当院では、”” や ”気管支喘息” にて通院されている方が多いですが、約70%に ”アレルギー性鼻炎” を合併しているという背景もあり、こちらに対する治療も併せて行っています。

くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどのアレルギー症状が出ると、日常生活にも影響し、例えば、イライラする・眠れない・集中力や思考力が低下する・疲れやすい・頭痛がする・外出したくない、などの状態となることがあります。アレルゲン免疫療法には、これらの一連の症状や状態に対しての治療効果が期待されます。

診断としては、まず問診により、アレルギー症状、程度、期間、昨年や一昨年はどうであったか、季節による違い、アレルゲンの存在、ご家族のアレルギー歴などを聞き取ります。次いで、各種アレルゲンに対するIgE抗体の血液検査を行います。ここでスギやダニに対するIgE抗体が高値であり、アレルギー性鼻炎の診断が正確になされた場合、アレルゲン免疫療法の治療適応となります。

実際の治療ですが、少量のアレルゲンを含んだ舌下液や舌下錠を、1日1回服用します。少量から開始して、増量し、一定量を数年間 (3-5年が推奨) 継続して服用します。舌下に投与し、しばらく保持したあと飲み込み、その後5分間はうがいや飲食を控えるようにします。また服用前後2時間は、できるだけ運動・入浴・アルコール摂取を控えることが望ましく、これらは強いアレルギー反応を起こしにくくするための配慮です。同様に、安全のため、初回のみ院内で服用して頂きます。

副作用に関しては、口内炎、唇・口・のどの粘膜の腫れや不快感、耳のかゆみ、頭痛などの副作用が出ることがあります。またβブロッカーやステロイドを内服中・妊娠中・不安定な重症喘息・全身性の重篤な疾患 (悪性腫瘍・自己免疫性疾患・重症心疾患・慢性感染症など) などの場合、治療を受けて頂くことはできません。

特に当院では、喘息合併例が多いですので、注意が必要です。咳や喘息に対する効果も期待されるのですが、今のところ喘息のみに対してアレルゲン免疫療法を行うことはできません。少量ながらアレルゲンである本薬剤を投与することで、むしろ悪化させてしまう可能性があるからです。一方、喘息とアレルギー性鼻炎の合併例に対しては、喘息が十分コントロールされている場合、アレルゲン免疫療法を導入することができます。

アレルゲンの回避や、従来通りの薬物療法 (抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、点鼻ステロイド薬など) も併用することができますので、患者さんの状態やご希望に応じた治療を選択させていただきたいと思います。

最後に、スギ花粉に対するアレルゲン免疫療法に関しては、スギ花粉の飛散している時期の内服開始はできませんので、ご希望の方はお早めにご連絡下さい。

実際の診療について、詳しくは製薬メーカーのサイトをご参照下さい (アレルゲン免疫療法ナビ:鳥居薬品株式会社)。

原因アレルゲン検査

アレルギー疾患において、問診や血液検査を行うことで、原因となる物質を同定することは重要なことです。この物質のことを、”アレルゲン” や “抗原” と呼びます。アレルギー疾患といわれてもピンとこないかもしれませんが、身近な存在である花粉症もそうですし、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、そしてアレルギーに関連した気管支喘息、アナフィラキシーショックなどが当てはまります。これらはアレルゲンに曝露することにより、しばしば発症してしまいます。

様々なアレルギー症状でお困りの患者さんが通院されてみえますが、このアレルゲンを同定することにより、アレルゲンから回避することが可能となる場合があります。つまり環境を改善することで、病状を良くすることができます。これらは薬物療法よりも重要なことです。

例を挙げますと、吸入薬や内服薬での治療を行ってもなかなか改善しない気管支喘息患者さん、よく話を聞いてみると、家で犬と一緒に寝ていることが判明したなどの場合があります。この場合は犬がアレルゲンとなっていますが、どんなに薬物療法を強化しても、アレルゲンに曝露し続けていると病状が良くならないわけです。「ペットは家族だ!」といった別の問題点もありますが、アレルギーの原因を断てないと、残念ながら病状はなかなか改善しないということになります。

2018年6月に、日本アレルギー学会から、3年ぶりに改訂され、『喘息予防・管理ガイドライン2018』が発刊されました。ここでも、”喘息の危険因子と予防” の項で、「アレルゲンは喘息症状の重要な増悪因子であることから、アレルゲンを減らすための環境整備が強く推奨される」と明記されています。

さて実際の診療では、まず問診により、何に曝露するとどのような症状が出るのかを聞き取りします。検査よりも、実際に引き起こされてしまう反応の方が、診断根拠としては高いものになります。問診でははっきりしない場合も多く、また予期せぬアレルゲンが見つかる場合もあるため、血液検査による原因アレルゲン検査も併せて行います。

ハチアレルギー検査のページでもお伝えしましたが、これらのアレルギーの病態に関与するのが ”IgE抗体” であり、肥満細胞や好塩基球を介して、アレルギー反応を起こします。IgE抗体が高い場合、アレルギー反応が出やすいといわれています。このIgE抗体は、血液検査を行うことによって、測定することができます。 IgE抗体全体の量 (非特異IgE抗体、RIST)、各種アレルゲンに対するIgE抗体の量 (特異IgE抗体、RAST) を測定します。

各種アレルゲンに対するIgE抗体は、1項目ずつ選択して測定する方法では、13項目までの測定が保険診療で認められています。ただし、”View アレルギー 39″ などの検査キットを用いることで、30種類以上の多くのアレルゲンを同時に測定することが可能となり、費用も13項目分と同額になります。こちらでは項目の選択はできなくなりますが、花粉・ダニ・ハウスダスト・真菌 (カビ)・ペット・食物・昆虫などを、まんべんなく測定することができますので、こちらの方がアレルゲン検索としての意義が高くなる場合が多いです。

費用の問い合わせが多い検査でもありますが、実際にアレルギー疾患がある場合は保険適応となります。前述の通りですが、13項目を選択して測定する場合も、検査キットを用いて30種類以上を測定した場合も、3割負担で、5,000円程度となります。

患者さん自身も、何に対してアレルギーを持っているかを把握しておきたいと思われていることが多く、他の検査に比べても、満足度の高い検査なように感じます。皆さん、熱心に結果説明を受けてみえます。強調しますが、アレルギー疾患において、アレルゲンの回避は最も重要なポイントですので、心に留めて頂きたいと思います。

肺がん

内科医・外科医・看護師・薬剤師を問わず、私たち呼吸器診療に従事している者の最大の難敵です。死因の第1位は悪性新生物 (がん)であり、部位別がん死亡率では、肺がんが第1位となっています。医学が進歩し、高齢化社会となっていますが、高齢化ががん患者の増えた要因と言われています。

肺がんに関しては、やはり喫煙との関連が強く、日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン2016』によると、肺がん患者の80-85%は喫煙者であり、肺がんになる危険率は非喫煙者の10-20倍とされています。喫煙により、COPDや間質性肺炎となり、傷んだ肺から発がんしてくることもしばしば経験します。

細胞が分裂する上で、遺伝子の制御により、秩序が保たれています。遺伝子は、アクセルとブレーキのような働きを持ち、細胞分裂がコントロールされています。発がん物質・紫外線などの原因により、長年にわたり、この遺伝子に傷がつき、アクセルとブレーキが故障して、細胞が異常増殖 (発がん)すると言われています (多段階発がん)。

また近年、Driver遺伝子と呼ばれる、強力ながん化遺伝子の存在が明らかになってきており、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子がその代表です。いわば強烈なアクセルのようなもので、非喫煙者に発現することが多く、逆にいうと非喫煙者の発がんの原因の一つです。分子標的薬とよばれる治療がよく効きますが、耐性遺伝子の発現などにより、耐性化することもわかっており、効果の期間に限りがありますので、まだまだ発展途中ではあります。

患者さんは、漠然と “がん=悪い” というイメージは持っていますが、何故、がんになると良くないのでしょうか。上述の通り細胞が異常増殖すると、細胞の塊となります。大きくなることで、物理的に、もともとの臓器の構造や機能を破壊します。雪が積もって、家が壊れるようなことが体内で起こります。また転移することで、あちこちでこのような障害が起こってくるのです。肺の障害 → 喀血・呼吸困難、脳の障害 → 頭痛・神経障害・痙攣、骨の障害 → 疼痛などがその例です。

検査は、採血 (腫瘍マーカー)、レントゲン、CT、PET-CT、頭部MRI、生検 (気管支鏡・経皮・外科的)などであり、検査自体が多く、時間がかかります。必ず全身評価を行い、隅々までがん細胞がいないかをチェックする必要があります。これらにより組織型 、Driver遺伝子の有無、病期 (ステージ)を診断します。

診断がついたら、①手術、②放射線療法、③化学療法の大きく3つの選択となりますが、緩和療法も併用します。私たち内科医は、主に③化学療法を行いますが、上述の分子標的薬や、近年は免疫療法も登場し、従来の抗がん剤治療の域を超えて、治療の幅は広がっています。治療の選択は、ガイドラインや使用薬剤の適正使用ガイドなどにより、決められていますので、専門医のいる施設であれば、どの施設でも治療レベルの差はなくなってきています。

しかし、進行期肺がんの場合、残念ながら、根治を目指すのは困難です。目標は2つ、命の期間を長くすること、その間の症状を軽減し生活の質を確保すること。がんの状態を把握するのは当たり前のことで、患者さんの性格、希望、精神状況、社会状況、家族背景などを、ちょっとした会話やその時の表情から、いち早く察して、あたたかく受け入れてあげないといけません。肺がんとその患者さん、ご家族さんから多くのことを学びました。診療所であってもできることもあるのかもしれません。

間質性肺炎

間質性肺炎は、最も難しい呼吸器疾患の一つです。医学が進歩している現代においても、まだまだ不明な点が多い疾患群です。日本呼吸器学会より『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き (改定第3版)』、『特発性肺線維症の治療ガイドライン2017』が発刊されており、これらに沿って診療をします。

吸った空気は、気管・気管支を通り、細かく枝分かれした後、肺胞と呼ばれる小さな袋に到達します。この肺胞の内側のことを “実質” といいます。逆に肺胞の外側のことを “間質” といいます。細菌性肺炎 (いわゆる肺炎)は、”実質” を主な炎症の場としますが、間質性肺炎はその名の通り、”間質” に炎症が起こります。同じ肺炎という名がついていながら、全く別のものであり、治療戦略も異なってきます。

間質性肺炎の原因として、喫煙・膠原病・薬剤性・アレルギー性・職業性などがありますが、原因不明のものを「特発性間質性肺炎」といいます。これは、特発性肺線維症 (IPF)・非特異性間質性肺炎 (NSIP)・急性間質性肺炎 (AIP)・特発性器質化肺炎 (COP)などに分類されます。一気に難しくなってきましたね。

肺胞とその周囲にある毛細血管は、酸素・二酸化炭素の交換をしますが、間質を通じて行われています。原因が何であれ、間質に炎症が起こると、線維化が起こり、厚く、硬くなってしまいます。肺全体が硬くなってくると、伸び縮みできなくなるため、浅い呼吸になってしまい、酸素も肺胞まで到達しにくくなります。またせっかく肺胞まで酸素が到達しても、間質が壁のように立ちはだかり、体内に酸素を取り込めません。その結果、体内の酸素が不足し、特に労作時を中心とした息切れの症状が出ます。また咳の症状も伴います。

身体所見としては、肺が硬くなるので、息を吸って肺が広がるときに、パリパリという特徴的な音を聴取します (捻髪音:fine crackles)。呼吸機能検査上は、肺活量が低下します。CT所見では、すりガラス影・線維化・蜂巣肺といった特徴的な影を認めます。必要に応じて、気管支鏡や外科的生検を行い、より詳しく精査します。

もう1点、大事な点があります。同じ症状・呼吸機能・画像所見・気管支鏡所見・組織所見であっても、患者さんによって進行速度が異なるという点です。専門家によっては、”Behavior” と呼ばれ、治療の開始・選択において重視されます。ふるまい・態度・素行という和訳になりますが、つまり、進行の速い場合と、遅い場合があるということです。前者は非常に怖く、あっという間に命に関わることもあります。また後者でも急に早歩きする ”急性増悪” という概念もあり、注意深く観察する必要があります。

最後に治療ですが、①ステロイド剤、②免疫抑制薬、③抗線維化薬を、パターンに応じて使い分けますが、かなり専門的な知識を要します。おおざっぱですが、ステロイドが効くパターンを見落とさないこと。ステロイドが効かないパターンであれば、②③を用いて、進行を何とか防いでいくこと。大学病院や呼吸器専門医での管理をおすすめします。

急性/慢性肺感染症

肺の感染症についてです。急性 (短期間の経過)と、慢性 (長期間の経過)にわけて考えます。急性の肺感染症とは、皆様ご存知の ”肺炎” ですね。一方、慢性の肺感染症、こちらは知らない方も多いのではないでしょうか。肺に菌が長く住み着いてしまうことがあり、 ”慢性下気道感染症” といいます。肺は気道を通じて、外界と交通した臓器なので、いろんな感染症に脅かされます。

まず ”肺炎” についてですが、日本呼吸器学会から、『成人肺炎診療の治療ガイドライン2017』が発刊されていますので、これに沿った診療を行います。どこで発症したかにより、「市中肺炎」、「院内肺炎」、「医療・介護関連肺炎」に分類されます。治療の標的となる菌の種類が異なるため、抗生剤の選択などの治療戦略も自ずとかわってきます。

軽症例は外来で治療できますが、重症例は入院が必要になります。外来治療か入院治療かは、主には呼吸の状態で判断することが多いです。酸素投与が必要なら、基本的には入院ですね。肺炎に罹患しても、適切な治療を受ければ多くの場合は改善しますが、高齢者や基礎疾患のある患者さんでは命に関わることもあります。高齢化社会を迎えた現在、死因の第3位になっています。誤嚥の対策や、ワクチン接種による肺炎の予防も大切ですね。

次に “慢性下気道感染症” です。中高年の女性に多いです。こちらの厄介な点は、一旦肺に菌が住み着くと、なかなか出て行ってくれないことです。生涯のお付き合いになることがほとんどで、菌は増殖し、少しずつ気管支や肺の構造を破壊します。その結果、気管支拡張や空洞を形成し、咳・痰・血痰 (喀血)・微熱・痩せなどの症状を引き起こします。

その原因菌としては、一般細菌 (インフルエンザ桿菌・緑膿菌など)や非結核性抗酸菌が多いですが、結核や真菌 (カビ)が紛れていることも多く、注意が必要です。痰を調べたり、必要に応じて気管支鏡を行うことで、菌の種類を同定します。治療はマクロライド療法 (エリスロマイシンやクラリスロマイシン、少量、2年間など)が中心となりますが、菌の種類によって治療内容を少しずつ変更します。

医療従事者からの認識が薄いことも問題点であり、 ”慢性下気道感染症 ⇒ 癌ではない ⇒ 放置して良い” と誤解され、また画像検査でも、 “陳旧性変化 (古い傷跡)” として扱われてしまうこともあります。特に、黄・緑・褐色の痰の症状が長引いている方、一度精査をおすすめします。

禁煙外来

いつの時代も、愛煙家と嫌煙家の対立はあったと思います。企業や団体、政府の思惑から、健康面だけでは語れない部分があり、少し複雑ですね。しかし昨今、世の中のタバコに対する風当たりが強くなっているようには感じます。

私の立場としては、健康被害に関して、強調してお伝えさせて頂かなければなりません。心血管病、COPD、肺癌に代表される、いわゆる “タバコ病” を最前線で目のあたりにし、健康被害を実感しているからです。どの患者さんも、発病して、初めて、後悔します。一方私は、喫煙と病気の関連性についてはお伝えしますが、喫煙してきたことをわざわざ非難するようなことはしません。

さて、疫学の話になりますが、厚生労働省の健康調査 (2016年度)によると、習慣的に喫煙している者の割合 (喫煙率)は、18.3% (男性30.2%、女性8.2%)となっています。約50年前には、特に男性は80%以上の喫煙率であったことを考えると、さすがに低下してきていますが、ここ数年は横ばいとなっている現状もあります。

では、誰が禁煙しているのでしょうか? 喫煙率を年齢別にしてみると、実は60歳以上の群で低くなっています。つまり、年齢を重ねてから禁煙しているのです。病気が近づいていることを実感し、また実際に発病する年代であるため、それが禁煙のきっかけになっているものと思います。「俺は65歳の時に心筋梗塞して、きっぱりやめたわ。」どこか誇らしげに、患者さんはそう言います。でも、それでは遅いのです。

他科の先生にも、「どこで禁煙治療してもらったらいいの?」と時々きかれますが、「すみません、開業医さんのどこでもできるみたいです。」と答えていました。ずっと無責任に感じていましたので、禁煙認定指導医の資格を取りました。薬物療法だけにはとどまらない診療が必要であると思っています。「彼女が嫌がる」、「タバコが高い」、「子供ができた」、「家を新築した」…、きっかけは何だっていいじゃないですか、将来のために、禁煙しましょう。”タバコ病の果て” を知っている者として、何か手助けできることがあると思います。

実際の診療について、詳しくは製薬メーカーのサイトをご参照下さい (すぐ禁煙.jp:ファイザー株式会社)。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、名前の通りに、睡眠中に無呼吸を繰り返す病気です。その結果、様々な症状や合併症が引き起こされてしまいます。こちらは、『成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン』に従って診療します。

まず当たり前のことですが、眠っている間に起こっていることですので、患者さんご自身は覚えていません。この点が他の病気とは大きく異なります。起床してからの頭痛や、昼間の眠気など、睡眠中の障害の影響を受けて出てくる症状から、病気の存在を疑わないといけません。その他の方法としては、ご家族から情報を得ることですね。ご家族のいびきや無呼吸に気付いている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりに脂肪が多いと上気道は狭くなりますので、肥満と深く関係しています。以前、専門施設の見学をさせて頂いた際に、患者さんが「先生、この病気の人って、みんなよく似た体型だね。」と笑いながら話されていたことを思い出します。

診断方法としては、まず携帯型装置を貸し出し、ご自身でセットし、呼吸の状態を評価します (簡易検査)。さらに詳細な検査が必要な場合は、脳波・筋肉の動き・気流などの評価を行いますが (ポリソムノグラフィー:PSG)、こちらは入院 (1泊)での検査になります。当院では施行できませんので、施行可能な施設を紹介させて頂きます。診断に至った場合、経鼻的持続陽圧呼吸療法 (Continuous Positive Airway Pressure:CPAP)の治療を導入します。CPAPとはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。

不安をあおるつもりは全くありませんが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、重症例ではより顕著であることが知られています。自覚症状を改善させるだけではなく、CPAP治療には予防的な意味合いもあり、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。

特に当院は、糖尿病 (⇒4-A. 糖尿病)や、メタボリック症候群 (⇒4-B. メタボリック症候群)、脂質異常症 (⇒4-D. 脂質異常症)の専門施設でもあり、こちらも肥満と関連しますので、心当たりのある方は、担当医までおっしゃって下さい。

COPD (慢性閉塞性肺疾患)

COPD (慢性閉塞性肺疾患) とは、肺癌と並ぶ呼吸器タバコ病の代表です。Chronic Obstructive Pulmonary Disease (慢性閉塞性肺疾患)の頭文字を取ってCOPD (シーオーピーディー)です。

数年前からCMなどでもさかんに啓蒙活動が行われていますので、耳にされたこともあるかもしれません。しかし患者さんに「COPDって知っていますか?」とたずねても、知らないと言われることがほとんどです…。「肺気腫って知っていますか?」とたずねると、何となくわかってもらえます。COPDは、認知度という点では、まだまだですね。高いところから大きな声で叫んでも、多分届かない、そう思います。私なりの啓蒙活動としては、一人一人に丁寧に、こつこつお声掛けし、いつまでも継続することです。

さて、そんなCOPDですが、日本呼吸器学会から、『COPD診断と治療のためのガイドライン (第4版)』が発刊されており、これに沿った診療を行います。その病態ですが、タバコ煙を長期にわたり吸入することで、気管支や肺に慢性的な炎症が起こります。その結果、気管支の壁が厚くなり、逆に内腔側は狭窄してしまいます (①慢性気管支炎)。一方、肺の方では、肺胞が破壊され、肺全体がスカスカのスポンジのようになってしまいます (②肺気腫)。これらのため、せっかく呼吸をしても、空気の流れが邪魔されてしまい、気流閉塞や気流制限がかかってしまいます。やがて、咳・ゼーゼー・呼吸苦・労作時呼吸困難・階段や坂道を中心とした長距離の歩行困難などの症状につながります。

自覚症状の確認や、喫煙歴などの問診により、COPDを疑うことができます。指先の簡単なモニターで、酸素の値を測定することもできます。そして検査ですね。まず呼吸機能検査でCOPDと診断とし、その病期 (Ⅰ~Ⅳ期)を決定します。ここで私の診療の工夫ですが、画像検査により、患者さんご自身の肺の構造やCOPDによる構造破壊を、つまりどれだけ肺が壊れているかを見て頂くようにしています。残念ながら、壊れた肺は元には戻りませんので、残った肺でいかにやりくりするかをじっくり一緒に考えます。

ここで助けになるのが、気管支拡張薬です。吸入することで、気管支を拡張させ、残った肺をうまく使うことが可能になります。病気を理解して頂くことで、治療の動機付けやその継続につながるものと思います。禁煙 (⇒3-E、禁煙外来)もお願いしますね。各論はまた追って、投稿させて頂きます。

文章中に何度もCOPDと記載しました。少しは啓蒙できたでしょうか?

気管支喘息

気管支喘息とは、“喘息 (ぜんそく) ” のことですね。最もよく知られた呼吸器疾患の一つかもしれません。日本アレルギー学会から、『喘息予防・管理ガイドライン2015』が発刊されており、これに沿った診療を行います。

ここでは、「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性を持った気道狭窄 (喘鳴、呼吸困難) や咳で特徴付けられる疾患」であると定義されています。ちょっと難しいですね…。もっと簡単に、①気管支に炎症が起こる→②粘膜がむくむ→③気道が狭くなる→④咳・ゼーゼー・呼吸苦の症状が出る。この流れを断つには、①の炎症を抑えないといけないわけです。

喘息の治療の目標は、下記とされています。

①健常人と変わらない日常生活を送ることができる。
②非可逆的な気道リモデリング*への進展を防ぎ、
正常に近い呼吸機能を保つ。
③夜間・早朝を含めた喘息発作の予防。
④喘息死の回避。
⑤治療薬による副作用発現の回避。

よく見て頂きたいのですが、喘息を治すことは、治療目標の中には入っていません。私が最もお伝えしたいこと、残念ながら、“基本的には喘息は治らない病気である” ということです。私たちは、根本的に治す治療ではなく、炎症を抑える治療をしているのです。上述の治療目標の各項目に「炎症を抑えて、」という前置きを入れると、よりわかりやすくなると思います。

ここで治療の中心となるのは、吸入ステロイド薬です。2000年頃から一般的に使用されるようになり、喘息治療の歴史が変わりました。症状を著しく改善させることができ、喘息死も激減しています。

これらの説明を怠ると、患者さんとすれ違ってしまいます。「先生いつまでこの吸入するのですか?」、「調子がいいからもうやめました。」、自己判断で定期通院をやめてしまうこともあります。しばらくはいいかもしれませんが、高率に再燃してしまいます。ちょっとした説明かもしれませんが、病気を理解して、信頼関係があって、初めて治療は成功するものと思います。各論はまた追って、投稿させて頂きます。

*リモデリング 長期にわたり炎症が持続することで、気道構造が変化してしまい、喘息が難治化すること。