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骨粗鬆症

骨粗鬆症とは、骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気のことです。年齢を重ねると、骨の量は減っていきますが、特に女性は閉経期を迎えると、女性ホルモンであるエストロゲンが欠乏するため、急に骨の強度が落ちてしまいます。その結果、骨折しやすくなり、ちょっとつまずいて手や尻もちをついただけで骨折してしまい、歩行困難、腰痛、腰の曲がり、背の縮み、寝たきり状態になるなど、後遺症を来すこともあります。

日本骨粗鬆症学会から『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015』が発刊されており、これに従って診療します。現在、高齢化に伴い骨粗鬆症患者は増加しており、約1300万人と推定されており、特に65歳以上の女性では、約半数近くが骨粗鬆症にかかっているといわれています。

骨粗鬆症は、骨強度の低下を特徴としますが、骨強度は、”骨密度と骨質”の2つの要因によって規定されています。骨強度に関して、70%が骨密度、30%が骨質に影響されるといわれています。これらは、加齢、エストロゲンの不足、骨形成の低下、骨破壊の亢進、ビタミンD・Kの不足、生活習慣病など、多岐の要因によります。

骨粗鬆症が骨折の最大の危険因子であることは広く知られていますが、特に大腿骨骨折など、下肢の骨折は生活の質を著しく落とすものであり、また年齢を重ねてから骨折すると改善やリハビリに時間を要すなど、さらに不利益が加わってきます。骨折を機会に寝たきり状態になるなど、認知症の発症や、結果的に命に関わってくることもあります。骨粗鬆症自体には自覚症状はありませんので、骨折の予防のために、診断と治療を要すると言えます。

さて、その診断ですが、問診や診察に加えて、骨密度を評価することで、その診断とします。当院ではMD法といい、レントゲンを使って、手の骨を評価します。専用のアルミニウムスケールを用いて、骨とアルミニウムの濃度を比べることによって測定します。簡単に測定することができます。

骨粗鬆症は、薬物療法が中心になりますが、糖尿病脂質異常症と同じように、食事療法や運動療法、いわゆる生活習慣の改善が重要です。

食事療法としては、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKのバランスの良い摂取が望まれます。摂取を推奨される食品として下記があります。一方、塩、カフェインを含む食品 (コーヒー、紅茶)、アルコールの過剰摂取は控えるように心がけましょう。

・カルシウム : 牛乳、乳製品、小魚、大豆など
・ビタミンD : 魚類、きのこ類など
・ビタミンK : 納豆、緑色野菜など

続いて運動療法ですが、運動することで骨密度は上昇するといわれています。またもう一つの目的としては筋力をつけることです。筋力をつけることでも運動機能を高め、転倒を回避でき、結果的に骨折の予防につながります。週に2-3回以上のウォーキングや筋力訓練が有用です。

最後に薬物療法ですが、大きく3つの種類にわかれます。

・骨吸収抑制薬 : 骨吸収 (破壊)をおさえる
・骨形成促進薬 : 骨形成をうながす
・カルシウム製剤 : カルシウムを補う

多くの骨粗鬆症の治療薬が登場し、病状や病因だけでなく、患者さんの生活スタイルにあわせた方法を選択し、治療できるようになりました。1日1回、週1回、月1回など、服用間隔が選択でき、また点滴/注射製剤もあります。

ここで、どの病気の治療でもそうですが、”服薬遵守 (ふくやくじゅんしゅ)”という言葉があります。スケジュールを守って、きちんと定期的に服薬することを意味しますが、自覚症状がない疾患や慢性疾患では、一般的にだんだん服薬を守れなくなってきます。特に骨粗鬆症では、治療開始後1年で45%が処方通りに内服できなくなり、5年以内に52%が脱落すると、海外から報告されています。

まず病気を理解して頂くことが前提で、信頼関係があって、初めて治療は継続・成功するものと思います。40歳をすぎたら骨密度の検査を行い、早めの対策をしましょう。