「5. 健診・検査・他」カテゴリーアーカイブ

妊娠と糖尿病

妊娠中の糖代謝異常には、下記の通りに、まず2つに分かれます。

・糖尿病が妊娠前から存在している場合 (⇒ ①糖尿病合併妊娠)
・妊娠中に発見される場合

妊娠中に発見される場合は、さらに2つに分かれます。

・妊娠中に発見または発症した糖尿病ほどではない軽い糖代謝異常
(⇒ ②妊娠糖尿病)
・妊娠前から診断されていない糖尿病があったかもしれないという糖代謝異常
(⇒ ③妊娠中の明らかな糖尿病)

それぞれの言葉の定義はなかなか難しいですが、なぜ妊娠中の血糖値の管理が重要なのでしょうか? 実は、妊娠中のお母さん(母体)が高血糖になることで、母体とともに赤ちゃんにも悪影響をもたらします。血糖値を適切に管理することで、妊娠高血圧症候群や流早産が減ったり、また赤ちゃんへの影響としては巨大児や胎児死亡などの合併を防げると言われています。よって妊娠中もしくは、妊娠を考えている女性は血糖値に気を付ける必要があります。

さて、妊娠糖尿病になりやすい人のリスク因子です

・尿糖が陽性である
・家族に糖尿病の人がいる
・肥満
・35歳以上
・巨大児の出産歴がある
・妊娠高血圧症候群
・羊水過多症
・原因不明の流早産・死産の経験がある

一般に、妊娠すると血糖値が上がりやすくなります。膵臓で作られるインスリンというホルモンは、血糖を下げる働きがあります。糖代謝異常というのは、このインスリンの量や働きが不十分となり、血糖の調節がうまくいかなくなった状態です。

妊娠すると、胎盤で作られるホルモンによりインスリンの働きが抑えられ、また胎盤ではインスリンを分解してしまう酵素も作られるため、妊娠していないときと比べてインスリンが効きにくい状態になり、これらの結果、血糖が上がりやすくなってしまいます。妊娠中、特に妊娠後半は高血糖になる場合があり、一定の基準を超えると、前述の妊娠糖尿病と診断されます。

妊娠中の血糖コントロールも厳格に行う必要があります。これも母体や赤ちゃんの合併症を予防するためです。薬物療法の中心はインスリン製剤になります。

・空腹時血糖 95mg/dl未満
・食後1時間値 140mg/dl未満 または 食後2時間値 120mg/dl未満
・HbA1c 6.0-6.2%未満
※妊娠週数や低血糖リスクに応じ個別に設定

妊娠を考えている方、上記のリスク因子をお持ちの方はもちろんのこと、またすでに糖尿病治療中の方も妊娠を考慮したときに血糖コントロールの目標値や薬の変更も必要になる場合があるため、ご相談いただければと思います。

最後にもう1点気を付けていただきたいのですが、無事出産に至り、ひと安心し、糖尿病をそのまま放置してしまうケースがあります。確かに妊娠糖尿病は、出産後、胎盤から分泌されるホルモンの影響がなくなること、活動量が増えること、授乳によるカロリー消費などで、一旦よくなることが多いです。ただし、約5%に糖尿病、約25%に何らかの糖代謝異常が残り、将来糖尿病になる確率は約7.4倍とされています。

定期的な健診を受診できずに、数年後には本格的に糖尿病を発症してしまうことをしばしば経験します。元気に子育てや職場復帰するためにも、ご自身の健康管理は大切ですので、ご注意をお願いします。

肺炎球菌ワクチン

新型コロナウイルス感染症の流行により、肺感染症の怖さや基礎疾患管理の大切さをご理解いただく機会になりました。さて、今回は肺炎球菌ワクチン予防接種のご案内になります。ご存じですか、肺炎球菌ワクチン。

当院では、呼吸器疾患や糖尿病を中心に診療していることから、定期通院中のほとんどの方が、いわゆる ”基礎疾患あり” に該当します。つまり、新型コロナウイルス感染症だけではなく、インフルエンザや肺炎をはじめとした感染症に罹患しやすく、また重篤化しやすくもあるため、その対策が必要となります。

手洗いやマスクなどの一般的な感染対策に加え、ワクチンによる予防が重要ですが、インフルエンザワクチンはいうまでもなく一般的になっています。一方、肺炎球菌ワクチンは聞き慣れない方もいるかもしれませんが、定期接種制度が開始されて以降、接種率が上昇しています。

さて、どちらのワクチンが優先されるべきなのでしょうか? 例えばインフルエンザが重篤化する場合、インフルエンザだけが悪さするのではなく、多くは肺炎球菌性肺炎を中心とした他の感染症を合併することにより悪化します。こういった点から、両方とも接種することが重要であるとされています。

また、肺炎球菌ワクチンは、1回の接種で約5年間効果が持続します。インフルエンザワクチンと最も異なる点です。よって、肺炎球菌ワクチンは季節を問わず、いつでも接種することができます。そもそも、定期接種の年齢に該当しなくても、基礎疾患があり、リスクの高い方は、直ちに接種すべきですので、いつでもご相談下さい。

助成に関しては、やや複雑ですので、津市 健康福祉部 健康づくり課のサイトをご参照下さい。

新型コロナウイルス感染症 Q&A

当院では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断や治療はできません。しかし現場では、毎日朝から晩まで、新型コロナウイルス感染症の話題で、異様な状況となっています。問い合わせも非常に多く、その全てにお答えすることができません。よくある質問についてQ&Aとして、当院の見解や対応について、簡単にお伝えすることとしました。開業医である私の立場からは、①感染者、②定期通院中の患者、③スタッフを守ることが重要と考えています。①感染が疑われる患者さんは、保健所に連絡し、しかるべき医療機関の受診を促すことが必要です。また②③に関しては、例えば3月末に当院のスタッフが発熱を認めました。直ちに帰宅させ、保健所に連絡し、私の判断で、翌日は半数以下のスタッフでの診療体制としました。早速、「あんたとこコロナか?」「ちゃんと保健所に連絡したんか?」などの声があり、スタッフに嫌な思いをさせました。幸いにもその後、全スタッフに発熱は認めませんでした。これはほんの一例ですが、このように状況に応じて、ブレーキをかけながらの診療体制になりますことをご容赦頂きたく思います。私たち開業医は備えや体力のない状況での診療であることも加筆しておきたいと思います。悪いのはコロナ、誰も悪くない。徹底して基礎疾患の診療を続けてまいりたいと思います。当院に定期通院中の患者さんは、とても落ち着いて対応されていると思います。

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について
三重県 新型コロナウイルス感染症について
津保健所 帰国者・接触者相談センター 059-223-5184

Q1 熱があります。どうしたらいいですか?

厚生労働省の指針に従い、①風邪の症状や37.5度以上の熱が4日以上続く、②強いだるさや息苦しさがある場合は、定期通院中の患者さんであっても、保健所に相談してもらっています。むやみに病院に駆け込まず、まず様子を見て下さい。大きな病院では「まずは近くで診てもらって」などと間違った指示で受診を断るケースが相次いでおり、患者の皆さんを思うと残念です。

Q2 PCR検査はしてもらえますか?

当院ではできません。

Q3 咳が続きます。どうしたらいいですか?

咳は、感染症・アレルギー(喘息や咳ぜんそく)・その他疾患で起こりうる症状です。鑑別は難しいですが、一般に感染症では熱や痰の症状を伴うことが多く、熱を伴う場合はQ1をご参照下さい。一方、3週間以上など咳の持続期間が長い場合は、アレルギーである可能性が高くなります。ご相談いただければ対応させていただきます。

Q4 アレルギーによる咳なのに、間違えられて困っています。

新型コロナウイルス感染症の流行のため、より難しい問題となりました。特に現在は、花粉によるアレルギーや黄砂による物理刺激などにより、咳の出やすいシーズンであることから、患者の皆さんの苦悩が目に見えます。通院中の方には、できる限り治療を強化したいと思います。

Q5 喘息の吸入薬をオルベスコに替えて下さい。

オルベスコとは吸入ステロイド剤であり、気管支喘息の治療薬です。日本感染症学会から、新型コロナウイルス感染症に有効であると3例の報告があり話題となりました。本当に効果があればよいですが、無治療での軽快例の報告もありますので、まだまだ情報集積中とのことです。感染予防目的では使用できないことも明記されています。喘息治療のよい薬剤ですので当院では多用してきましたが、供給困難に陥っており、新規の処方が制限され困っています。また吸入ステロイド剤と気管支拡張剤の合剤(シムビコート・フルティフォーム・レルベアなど)からオルベスコに変更すると、喘息が悪化する可能性がありますので、安易な変更は避けるべきです。

Q6 私の病気は基礎疾患に当てはまりますか?
Q7 糖尿病でも重症化しやすいですか?
Q8 若くても助からない人がいるのはなぜですか?
Q9 人工呼吸器や人工肺(ECMO)でよくなるのですか?

少し内容が難しくなります。厚生労働省によると、基礎疾患とは、糖尿病・慢性心不全・呼吸器疾患となっており、重症化しやすいとされています。呼吸器疾患とは、気管支喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)・間質性肺炎・肺癌などの疾患が挙がり、つまり肺に予備力がない方が該当します。一方、若く基礎疾患がなくとも、ウイルスに刺激を受け、過剰な免疫反応が起こり(サイトカインストーム)、肺が障害を受け(ARDSやDAD)、助からない人も出てきます。このような状態になると良かれと思わる薬剤を投与し、肺の炎症がUターンして改善してくるのを待つ形となります。自身の呼吸だけで酸素をまかなえない場合は、酸素投与、人工呼吸器、人工肺(ECMO)を用いることとなります。これらはあくまで補助になりますので、これらにより改善するわけではありません。日本感染症学会に掲載されている全ての論文に目を通していますが、おおむね同様の見解です。

Q10 これまで感染者はいましたか?
Q11 病院に行かない方がいいですか?

当院ではこれまで、新型コロナウイルス感染症は発生していません。ちなみに三重県のホームページに「新型コロナウイルス感染症患者の発生について」と題して全470例が公開されています(2020.9.20時点)。もちろん今後の流行の程度にもよりますが、インフルエンザ流行期のように次々に発熱患者が来るような状況ではありませんので、現時点では感染の危険性は高くないと思います。報道により過度に恐れ、通院が途絶え、治療も中断、基礎疾患が悪化してしまった例がありましたが、本末転倒と思います。新型コロナウイルス感染症の対策の一つとしても、基礎疾患の治療はきっちり受けるべきです。

Q12 先生は怖くないのですか?

私は最も感染リスクが高い一人かもしれません。職業病ですが、悪性疾患や感染症により、遅かれ早かれ死亡することを想定し、日常を送っていますので、怖くありません。通院中の患者さんやスタッフに感染させることの方が怖いです。

Q13 テレビは信じていいんですか?

良い情報だけをつないで良い物語を作ること、悪い情報だけをつないで悪い物語を作ることは容易です。不安をあおるような構成の情報番組は、話半分でいいのではないでしょうか。本当に患者の皆さんや国民のことを考えている人を頼ればいいと思います。感染予防や自粛などの適切な情報には従っていただきたいと思います。厚生労働省や三重県からの情報が当然ながら適切かと思いますのでリンクしました。

Q14 マスクは売ってもらえますか?

できません。

Q15 病院にはマスクを着けていくべきですか?

感染対策として医療従事者と患者が共にマスクを着用することが重要とされています。まだ価格は高めではありますが充足してきましたし、 ”アベノマスク” も届いていると思いますので、ありがたく用いましょう。自覚する症状がなくても、来院前には体温を測定し、必ずマスクを着用してお越しください。お互いを守りましょう。

Q16 とても心配です。いつもより咳が多く、息も苦しい気がします。

咳ぜんそく・気管支喘息・COPDの複数の患者さんから問い合わせを頂いています。最初から気のせいと決めつけるのではなく、実際に喘息発作や増悪が起こっていないかどうかを確認します。診察時のさりげない会話・酸素飽和度(SpO2)・聴診・呼気NO検査・呼吸機能検査・レントゲンなど、必要に応じて、客観的に評価します。確かにストレスや不安から喘息発作を来すこともあるのですが、稀です。今のところ、検査を行ってもいつもと変わりなく、精神的にそのように感じていることが多いようです。このように説明して安心して過ごしていただくことも、私たちの仕事なのかもしれません。

Q17 ジムにも行けず、家にいるとついつい食べ物に・・・。どうしたらいいですか?

 糖尿病や脂質異常症など生活習慣病の患者さんから問い合わせを頂いています。どの家庭においても非常時の備えとして、いつもよりやや多めに食べ物を購入していると思われ、これも一因かもしれません。家にいる時間も長くなっていると思います。運動療法についてもなかなか難しい問題ですが、当院ではこれまでスポーツインストラクターを中心に、室内でもできる運動療法を推奨してきました。ストレッチやスクワットなどの運動を少しずつでも継続的に行って下さい。通院中の方には用紙をお渡し説明させていただきます。

Q18 オンライン診療に対応していますか?

対応しておりません。新型コロナウイルス感染症に限った話ではありませんが、呼吸器内科の診療においては、診察時のさりげない会話・酸素飽和度(SpO2)・聴診・呼気NO検査・呼吸機能検査・レントゲンなどによる適切な評価が必須です。呼吸を担う大切な臓器の診療です。通信システムのみによる判断では、誤診や治療の遅れが容易に予測され、むしろリスクが増えると考えます。また患者の皆さんとの関係が希薄になることも好みません。ひと段落した後も、当院では導入するつもりはありません。

Q19 不平不満について。

外出しないことだけが自粛ではないと思います。これ以上のコメントは控えます。

Q20 第2波が不安です。どうしたらいいですか?

基本的に心がけることは変わりありません。これまで通りですが、報道に惑わされ、過度に心配する必要もないと思います。ただ、気の緩みは確かで、病院受診ですらマスクの着用忘れが目立つようになってきています。最低限のマナーは守り、そしてお互いを守りましょう。私たちは患者さんのためにできることを粛々と続けます。

第7回 糖尿病教室

当院では、糖尿病の予防・管理・治療意欲の向上などを目的として、季節ごとに ”糖尿病教室” を開催しています。これまでもたくさんの患者の皆さんにお集まりいただき、大変盛況となっています。

今回は第7回目となりますが、真冬の開催になります。そこで、テーマも「冬こそ代謝up!のチャンス」とさせて頂きました。冬の方が痩せやすいって知っていましたか? 副院長・管理栄養士から、それぞれ詳しく解説させていただきます。その後はスポーツインストラクターと一緒に軽く運動しましょう。今回も3本立てです。

”糖尿病教室” は、保険診療適応となります。3割負担の方で、300円程度の費用になります。当院に通院中の患者さんにはお声掛けさせて頂きますが、定期通院のない患者さんでもご自由に参加していただけます。これを機会に当院をのぞいてみてはいかがでしょうか。ご希望の方はご連絡下さい(⇒059-233-0024)。定員は15名までとなりますので、お早目にお申込み下さい。

●第7回 糖尿病教室
・日時:2019年12月12日(木)、12時30分~13時30分
 1時間前後を予定します(14時から午後診のため)
・場所:おおにし呼吸器・糖尿病内科 呼春の森診療所 待合室
・内容:副院長・管理栄養士・スポーツインストラクター 「冬こそ代謝up!のチャンス」
・持ち物:保険証、当院診察券・糖尿病連携手帳(お持ちの方)
・費用:300円程度(保険診療適応)

蜂とアレルギー

中日新聞の生活面の「つなごう医療」に、取材記事を掲載していただきました (2019.8.6)。テーマは「蜂とアレルギー」です。

梅雨が明け、急激に暑くなり、蜂が活発に活動しています。庭作業が日課の私も、頻繁に蜂を見るようになりました。アシナガバチが多いですが、時にスズメバチも飛来しています。特にスズメバチは攻撃性が高く、身の危険を感じます。

さて、皆さまご存じの通りで、蜂に刺されると命にかかわることがあります。全身の皮膚症状に加えて、呼吸困難や血圧低下といった生命に危機を与え得る症状が出ることを “アナフィラキシー”と言います。蜂に刺されたことによる死亡者数は、年間20人ほどとされています。

アナフィラキシーの診療において最も大切なことは、救急外来での初期診療になります。いわゆる救命処置ですね。しかし、ここで終わりではありません。「同じことを起こさせないように対策すること」の必要性を強調したいと思います。

一つ目は原因の検索です。IgE抗体という、アレルギー反応を引き起こす抗体があり、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチについて、血液検査で簡単に測定することができます (ハチアレルギー検査)。蜂に刺されたことがある人、アレルギー反応が強かった人、住まいや職業で刺される可能性が高い人は、一度測定されるとよいと思います。

二つ目は、アドレナリン自己注射製剤である “エピペン”を携帯することです。有事の際には自己注射し、かつ救急要請することで、命の危険を回避することができます。

これらの対策に加え、そもそも蜂に刺されないようにすることも大切です。実は、今回の取材を受け、蜂のことばかり考えているときに、何気なく診療所の軒下を見てみると、まさかの蜂の巣を発見しました。巨大なスズメバチに後ずさりし、直ちに専門業者に駆除していただきました。

皆さまも、ベランダや軒下のチェックをお忘れなく!

妊娠と甲状腺疾患

第4回母性内科学会総会 (東京, 2019.7.28)に、副院長が参加してきました。あまり聞き慣れないと思いますが、母性内科学とは、妊娠期を中心に、妊娠前から妊娠後にかけての内科的合併症の治療や将来の疾病予防と健康増進を目的とした学問とされています。別頁でも述べましたが、特に咳ぜんそく気管支喘息糖尿病甲状腺疾患において、妊娠や出産に配慮した適切な対応ができるよう、これからも学会などにも積極的に参加してまいりたいと思います。それでは、今回はちょっと難しいですが、妊娠と甲状腺疾患についてです。

甲状腺自己免疫疾患であるバセドウ病や、慢性甲状腺炎などの甲状腺疾患は女性に多く、妊娠可能年齢に好発することが知られています。また甲状腺ホルモンが多くても少なくても、流早産、妊娠高血圧症候群、低出生体重児のリスクが上昇すること、不妊症の原因にもなることから、近年注目されており、妊娠前からの適切な管理が重要です。甲状腺疾患の一般論については、以前にも述べさせていただきましたので、詳細はこちらもご参照下さい。

最初に、妊娠や出産における甲状腺機能低下症の管理についてです。健診などの採血では、甲状腺ホルモンを測定する機会はあまりないと思いますが、近年、不妊治療をきっかけに甲状腺ホルモンを測定され、甲状腺疾患が発見されることが増えてきています。まだ自覚症状のない状態であっても見つかることもあります。

・FT4 甲状腺ホルモン 基準値0.82~1.63 ng/dl
・TSH 甲状腺刺激ホルモン 基準値0.38~4.31 µIU/ml

慢性甲状腺炎などの甲状腺機能低下症  (FT4 低値 かつ TSH 高値) では、甲状腺ホルモン量が不足するため、その補充療法であるレボチロキシン  (チラーヂンS®) の内服を行います。一方、潜在性甲状腺機能低下症  (FT4 正常 かつ TSH 高値) といい、まだ甲状腺ホルモン量自体は正常範囲内の状態であっても、流早産との関連性があることが明らかになっており、特に不妊治療を行う際には、積極的に甲状腺ホルモンを補充することが推奨されています。

また妊娠中に関しては、特に妊娠5-15週に甲状腺ホルモンの需要が1.4倍に増大することから、レボチロキシンを内服中の方は、妊娠成立後に増量が必要になることが多いです。補充量に関しては、適宜採血でFT4やTSHを確認しながら、TSH値2.5 µIU/ml未満を目安に調整していきます。

続いては、妊娠や出産におけるバセドウ病の管理についてです。バセドウ病では、甲状腺ホルモン量が過剰になってしまいますが、治療としては、①薬物療法、②放射線治療、③手術に分かれます。それぞれのメリット・デメリットがあり、方針によって治療の期間や治療を受ける施設も異ってくるため、患者さんと相談しながら決定しています。

①薬物療法を選択することが最も多くなりますが、こちらは当院でも行うことができる治療になります。抗甲状腺薬にはチアマゾール  (メルカゾール®, MMI) とプロピルチオウラシル  (プロパジール®, PTU) があります。一般に、チアマゾールの方が、効果・副作用・服用回数が少ないことなどからも、非妊娠時には第一選択薬として使用されています。

しかし妊娠初期のチアマゾールの胎児への影響として、奇形 (腸関連奇形と臍帯ヘルニア)が知られており、妊娠初期 (妊娠10週未満) は可能であれば、プロピルチオウラシルに変更したり、一時的にチアマゾールを中止する場合もあります。

また出産後、しばらくしてからバセドウ病が悪化することがあり、注意が必要で、抗甲状腺薬が必要になることもあります。特に授乳する場合、抗甲状腺薬の乳汁への移行を考慮して、チアマゾール 10mg/日、プロピルチオウラシル 300mg/日までは投与可能としています。

以上のように、甲状腺疾患をお持ちの方は、妊娠前から少しずつ準備が必要です。母子とも安全に出産を迎えられるように、適切な治療を受けていただきたいと思います。

 

特定健診 2019

皆さま、7月になりましたので、”特定健診” のご案内になります。対象者には、お手元に受診券が届いているかと思います。受付を開始しておりますので、お問い合わせ下さい。

さて、そもそも “特定健診” とは、40歳以上75歳未満の被保険者全員に、メタボリック症候群糖尿病などの生活習慣病の発症を予防することを目的に発足した制度です。生活習慣病の該当者や健康を害する恐れのある予備群を減少させることが目的とされています。

特に当院では、糖尿病メタボリック症候群脂質異常症などについて、専門的な診療を提供することができます。”特定健診” により、生活習慣病やその予備軍に該当した場合でも、その後の管理も含めて対応できますので、より安心して健診を受けて頂けるかと思います。

また、各種がん検診 (肺、大腸、前立腺、肝炎ウイルス) も行いますし、その他の個人や企業などの一般健診や、胸部CT検診も行っております。ご希望の方はお問い合わせ下さい。

妊娠と気管支喘息

妊娠と呼吸器疾患の管理において大切なことは、胎児の酸素の状態を考慮することです。つまり、妊婦が低酸素に陥ると、胎児にも負担がかかってしまいます。その結果、妊娠合併症の増加、発育不良、早産・死産の増加などにつながってしまいます。妊娠中に低酸素に陥りやすい代表的な病気として、気管支喘息が挙げられます。

喘息はホルモンバランスにより悪化します。妊娠することで大きくホルモンバランスが変化しますので、喘息患者さんの約1/3が妊娠中に悪化するとされています。また、もともと喘息の持病がなくても、長引く咳・喘鳴 (ぜーぜー)・呼吸困難をはじめとした症状にて、新規に喘息や咳ぜんそくを発症することもあります。出産を終えると改善することが多いですが、次の妊娠でも同じようなことが起こる場合があり、後に本格的に喘息を発症することもあります。

喘息の一般論や治療については以前に記載させていただきましたので、詳しくはこちらもご参照下さい。吸入ステロイド薬の登場により、喘息治療の歴史が変わりました。2000年頃から一般的に使用されるようになり、ステロイドを吸入として用いることで、内服や点滴に比較し、安全に使用できるようになりました。それ以降、喘息コントロールの著しい改善をもたらし、喘息死も激減しています。

それでは、吸入とはいえステロイド、妊娠中に使用してよいのでしょうか? これは問題ありません。特にブデソニドというステロイドの安全性が高いとされ、これはパルミコートやシムビコートに含まれるものであり、これらの薬剤を中心に使用します。もちろん吸入ステロイド薬には、口内炎や声枯れなどの副作用がありますので、うがいなど基本的な対策は忘れないようにすることが大切です。なお、その他の内服薬剤についても安全性の高いものを選べば、妊娠中であっても使用することができます。一方、妊娠中に限ったことではありませんが、不要な薬剤をわざわざ使用する必要はありませんので、最低限の投薬を心がけたいと思います。

強調しますが、胎児の酸素の状態を考慮することが最も大切なことです。妊娠しているからと自己判断で吸入薬を止めてしまう、不慣れな医療従事者が中止を指示してしまう、これらにより喘息コントロールが悪化してしまうケースを数多く経験してきました。安全性の高い薬剤を選択して、きっちり吸入して、しっかり喘息をコントロールすること。できれば咳もおさまった状態で、穏やかに出産の日を迎えていただきたいと思います。

第6回 糖尿病教室

当院では、糖尿病の予防・管理・治療意欲の向上などを目的として、季節ごとに ”糖尿病教室” を開催しています。これまでもたくさんの患者の皆さんにお集まりいただき、大変盛況となっています。

もう第6回目となり、今回は真夏の開催になりますが、テーマも「夏に起きるキケンなこと!」とさせて頂きました。副院長・看護師・管理栄養士からそれぞれ、”夏本番に向けて気を付けること”、”夏のフットケア”、”夏バテ対策 ~夏に食べてほしいもの~” についてお話させていただきます。3本立てでいこうと思います。

”糖尿病教室” は、保険診療適応となります。3割負担の方で、300円程度の費用になります。当院に通院中の患者さんにはお声掛けさせて頂きますが、定期通院のない患者さんでもご自由に参加していただけます。これを機会に当院をのぞいてみてはいかがでしょうか。ご希望の方はご連絡下さい(⇒059-233-0024)。定員は15名までとなりますので、お早目にお申込み下さい。

●第6回 糖尿病教室
・日時:2019年8月1日(木)、12時30分~13時30分
 1時間前後を予定します(14時から午後診のため)
・場所:おおにし呼吸器・糖尿病内科 呼春の森診療所 待合室
・内容:医師・看護師・管理栄養士 「夏に起きるキケンなこと!」
・持ち物:保険証、当院診察券・糖尿病連携手帳(お持ちの方)
・費用:300円程度(保険診療適応)

妊娠と内科合併症

妊婦が医療機関を受診した際に上乗せされる『妊婦加算』。社会問題となり、すっかりほとぼりが冷めた状態となっていましたが、再開の方向で検討に入ったとニュースになっています。すでに反対派がざわざわしているようですが、どうなることでしょう。

昨今、働く女性が増えたこともあり、晩婚化が進み、妊娠や出産も高齢化しています。35歳以上での出産を高齢出産といいますが、内科合併症・流早産・胎児低体重や胎児合併症の問題が増えてしまいます。高齢出産ではなくても一定の割合で起こるわけですが、そうなってしまった場合、ご自身を責めたりすることもあるでしょうし、何かのせいにしたくなることもあるかもしれません。あの時の検査のせいかも、あの時の薬のせいかも…。

A「何かあったら責任取れないから、産婦人科で診てよ。」
B「いやいや、何でも産婦人科に言われても困るよ。」
C「たらい回しにしないで!」
D「じゃあ、特別な配慮を設けて、皆で協力しながらやろうよ。」

妊婦加算とは、大雑把にいうとこういう流れから発案された制度でした。本来は、妊婦がより良い体制で診療を受けられるようにと配慮したもので、少子化対策の一つでもありました。しかし、妊婦に支払いを負わせるという点が、少子化に逆行すると批判されてしまいました。現在、制度の凍結により妊婦加算の支払い自体はしなくて済むようになっており、自分が解決したかのように振る舞う政治家もいますが、これからも誰かが診療していかなければならないという点においては、何も解決していないと思います。

さて当院にも、不妊治療中・妊婦・授乳婦の患者さんが通院されています。少しでも貢献できることがあればよいですが、内科合併症の中では、咳ぜんそく気管支喘息糖尿病甲状腺疾患については、配慮した対応ができると思います。それぞれについては、追って解説させていただきます。糖尿病・甲状腺疾患を担当する副院長は女性医師ですし、繊細なことも相談しやすいかもしれません。また薬剤師とも連携し、より安全性の高い薬剤の選択や、また最低限の投薬を心がけています。子供たちと将来のことを考えて、私たちでできることをひとつひとつ、やっていこうと思います。

妊娠と気管支喘息妊娠と甲状腺疾患妊娠と糖尿病についてもそれぞれ解説しましたので、ご参照下さい。