「I. 花粉症」カテゴリーアーカイブ

花粉症

今日は花粉症のお話です。インフルエンザが記録的な流行をみせる中、花粉症まで重なってきます。せっかく春が近づいているのに、憂鬱になりますよね。

花粉症とは、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称であり、主にアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎のことをいいます。咳ぜんそく気管支喘息にも悪影響しますので注意が必要であり、当院でも積極的に花粉症の治療を行っています。花粉症は、『鼻アレルギー診療ガイドライン2016』 などに準じて診療を行います。

日本人の約5人に1人は花粉症と言われています。2月中旬からの飛散が予測されていますが、花粉が飛び始めてすぐに症状が出る人もいれば、たくさん飛んではじめて症状が出る人もいます。病状も同じように、軽い場合、重い場合があり、さまざまです。つまり同じ花粉症でも、個人差があるわけです。

外から侵入してきた花粉に対して、体が ”異物” と認識することで、アレルギー反応が起ります。その結果、目のかゆみ・くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が引き起こされてしまいます。また、あまり知られていませんが、頭痛・微熱・倦怠感などを伴うこともあります。花粉は粒子が大きいため、目や鼻に付着し、気管支や肺の奥までは入らないとされていますが、咳や喘息症状の悪化もしばしば伴います。これは、目や鼻でアレルギー性炎症のスイッチが入ってしまうと、気管支や肺まで炎症が伝わってしまうからです。

私は、何の病気 (癌・感染症・アレルギーなど) であっても、”全身治療” と ”局所治療” に大別して診療にあたります。これを組み合わせて、病気を抑え込みにかかります。前者は血液の流れにのって全身に広がってくれるもの、後者はその場所で特にパワーを発揮してくれるもの。花粉症においては、抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン薬の抗アレルギー薬の内服が前者にあたり、点眼薬・点鼻薬が後者にあたります。また、咳や喘息症状を伴う場合は、吸入ステロイド薬も併用します。

「治療の開始は、花粉の飛びはじめに」 と言われています。三重県では2月上旬が望ましいでしょう。最近の抗アレルギー薬は、眠気などの副作用も少なく、かつ効果も高くなってきています。また、点鼻薬や点眼薬も当院で処方できますので、遠慮なくお申し付け下さい。なお、今季はシーズンを逸してしまいましたが、来季に向けてアレルゲン免疫療法を行うこともできます。

最後にご自身での対策として、メガネ・マスクの着用、外出を控える、花粉のつきやすい衣類を控える、衣服を払ってから入室する、こまめに掃除をするなどがあります。いずれも抗原回避が目的になりますので、ぜひお気を付け下さい。

アレルゲン免疫療法

“アレルゲン免疫療法” をご存知でしょうか? 近年、舌下薬を用いることができるようになり、”舌下免疫療法” とも呼ばれます。季節性アレルギー性鼻炎 (スギ花粉症) や、通年性アレルギー性鼻炎 (ダニアレルギー) を対象とした治療であり、アレルギーの原因であるアレルゲンを少しずつ体に投与することで、体を慣らして、根本的な改善を期待する治療方法です。現在、”スギ花粉” と ”ダニ” に対する治療が保険適応となっており、その治療指針として、「スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き」、「ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き」が日本アレルギー学会からそれぞれ発刊されています。

アレルギーを根本から改善することが期待できるという点で、一般的な薬物療法とは一線を画すものでありますが、まだまだ認知度も低いと思います。主に花粉症の治療方法ですので、耳鼻科での取り扱いが多くなりますが、他の診療科では医師であっても存在を知らないことも多いと思います。よって、積極的に周知していくことも、私たちアレルギー専門医の役目であります。当院では、”” や ”気管支喘息” にて通院されている方が多いですが、約70%に ”アレルギー性鼻炎” を合併しているという背景もあり、こちらに対する治療も併せて行っています。

くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどのアレルギー症状が出ると、日常生活にも影響し、例えば、イライラする・眠れない・集中力や思考力が低下する・疲れやすい・頭痛がする・外出したくない、などの状態となることがあります。アレルゲン免疫療法には、これらの一連の症状や状態に対しての治療効果が期待されます。

診断としては、まず問診により、アレルギー症状、程度、期間、昨年や一昨年はどうであったか、季節による違い、アレルゲンの存在、ご家族のアレルギー歴などを聞き取ります。次いで、各種アレルゲンに対するIgE抗体の血液検査を行います。ここでスギやダニに対するIgE抗体が高値であり、アレルギー性鼻炎の診断が正確になされた場合、アレルゲン免疫療法の治療適応となります。

実際の治療ですが、少量のアレルゲンを含んだ舌下液や舌下錠を、1日1回服用します。少量から開始して、増量し、一定量を数年間 (3-5年が推奨) 継続して服用します。舌下に投与し、しばらく保持したあと飲み込み、その後5分間はうがいや飲食を控えるようにします。また服用前後2時間は、できるだけ運動・入浴・アルコール摂取を控えることが望ましく、これらは強いアレルギー反応を起こしにくくするための配慮です。同様に、安全のため、初回のみ院内で服用して頂きます。

副作用に関しては、口内炎、唇・口・のどの粘膜の腫れや不快感、耳のかゆみ、頭痛などの副作用が出ることがあります。またβブロッカーやステロイドを内服中・妊娠中・不安定な重症喘息・全身性の重篤な疾患 (悪性腫瘍・自己免疫性疾患・重症心疾患・慢性感染症など) などの場合、治療を受けて頂くことはできません。

特に当院では、喘息合併例が多いですので、注意が必要です。咳や喘息に対する効果も期待されるのですが、今のところ喘息のみに対してアレルゲン免疫療法を行うことはできません。少量ながらアレルゲンである本薬剤を投与することで、むしろ悪化させてしまう可能性があるからです。一方、喘息とアレルギー性鼻炎の合併例に対しては、喘息が十分コントロールされている場合、アレルゲン免疫療法を導入することができます。

アレルゲンの回避や、従来通りの薬物療法 (抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、点鼻ステロイド薬など) も併用することができますので、患者さんの状態やご希望に応じた治療を選択させていただきたいと思います。

最後に、スギ花粉に対するアレルゲン免疫療法に関しては、スギ花粉の飛散している時期の内服開始はできませんので、ご希望の方はお早めにご連絡下さい。

実際の診療について、詳しくは製薬メーカーのサイトをご参照下さい (⇒ アレルゲン免疫療法ナビ:鳥居薬品株式会社)。