日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインによると、アナフィラキシーとは「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危険を与え得る過敏反応」と定義されています。「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックといいます。
まず簡単に、アレルギーについて触れたいと思います。アレルギーを引き起こす物質を、”アレルゲン”または “抗原”と呼びます。私たちにとって最も身近なアレルギー疾患は、花粉症ですが、この場合、スギ花粉やヒノキ花粉が ”アレルゲン”になるわけですね。その他のアレルギー疾患としては、蕁麻疹・アトピー性皮膚炎に代表されるアレルギー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息などが挙がり、今回のテーマのアナフィラキシーもここに含まれます。
また、アレルギー疾患は、主に眼・鼻・皮膚・口・気管支で起こります。これらの臓器の特徴は、外界と接していることです。つまり外界からのアレルゲンにさらされやすく、トラブルが起こりやすいわけです。眼に入る、鼻に入る、皮膚に接する、食べる、吸い込むことによって、発症してしまいます。
そもそも無害であるはずの物質に対して、どうしてアレルギー反応が起こってしまうのでしょうか。アレルゲン曝露によりアレルギーが生じる状態になることを ”感作 (かんさ)”と呼びます。感作の成立には、①体側の要因、②環境の要因、③感作経路の3つが重要とされています。感作アレルゲンは患者さんによって大きく異なりますが、成人では、花粉、ダニ、ホコリ、食物 (小麦・魚類・甲殻類・果物)、ペット、カビが多いです。
これらのアレルギー反応に関与するのが “IgE抗体”であり、肥満細胞・好塩基球・炎症性物質を介して、アレルギーを起こします。各種アレルゲンに対するIgE抗体を測定することで、「何に対してアレルギーを持っているのか」を調べることができます。これらは、血液検査で、簡単に測定することができますので、アレルゲンを回避するという点において非常に役立ちます。詳しくは原因アレルゲン検査の頁もご参照下さい。
アナフィラキシーの多くは、IgE抗体を介したアレルギー反応により発症します。例えば、1回目蜂に刺される→蜂に対するIgE抗体を獲得する (感作)→2回目蜂に刺される→IgE抗体を介してアナフィラキシーを発症する。このような流れが一般的です。ここで注意が必要ですが、IgE抗体が関与せず発症する場合もあり、薬剤や造影剤などによるアナフィラキシーに代表され、この場合、初回投与でも発症する可能性があります。
さて、どのような人に起こりやすいのでしょう。気管支喘息を持っている人はアナフィラキシーの重篤化の危険が高いとされています。特にコントロール不良例でリスクが高く、普段から喘息のコントロールを心がけましょう。
また運動による誘発にも注意が必要です。食物依存性運動誘発アナフィラキシー (food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIA)と呼ばれ、原因食物の摂取または運動のそれぞれ単独では症状は出ないが、双方がそろうとアナフィラキシーが誘発される疾患があります。例えば、小麦を食べる→運動する→アナフィラキシーを発症する。この場合、運動2時間前は原因食物の摂取禁止などの指導をすることで防ぐことができます。
ここまでが、アナフィラキシーの一般論でした。アナフィラキシーの症状と対策については、別頁をご参照下さい。