高血圧症

血圧は、測定器があれば自宅でも簡単に測定できる身近なものであり、健康診断などを機会にほとんどの方は測定したことがあるかと思います。生命に危険が迫っているのかどうかを判断する指標をバイタル (vital=生命) サイン (sign=徴候) といいますが、その一つでもあります。

さて血圧とは、心臓から送り出された血液が、血管壁を押す力のことです。心臓が収縮し、全身に血液を送り出す際の最も高い血圧を ”収縮期血圧 (いわゆる 上の血圧)”、心臓が拡張し、心臓に血液が戻るときの最も低い血圧を ”拡張期血圧 (いわゆる 下の血圧)” といいます。この収縮期血圧が140mmHg以上、又は拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧といいます。

日本高血圧学会から発刊されている『高血圧治療ガイドライン2014』によると、日本の高血圧者数は、約4300万人といわれ、人口の3人に1人になります。血圧が高くなるほど、心血管病、脳卒中、慢性腎臓病などのリスクが高くなり、高血圧に起因する死亡者数も年間10万人と推定され、喫煙に次いで多いとされています。

高血圧の原因については、原因が特定できない ”本態性高血圧” が約90%、原因が特定できる ”二次性高血圧” が約10%程度です。本態性高血圧は、塩分・肥満・喫煙などの要因はさまざまで、食事・運動療法などの生活習慣の改善が重要とされています。一方、二次性高血圧の中では ”原発性アルドステロン症” が多く、副腎から分泌されるアルドステロンというホルモンの過剰分泌で起こる病気です。原発性アルドステロン症であれば、アルドステロン拮抗薬による薬物療法や、副腎摘出術で完治できる可能性もあります。

続いて、血圧測定と診断ですが、まず ”診察室血圧”、”家庭血圧” という言葉があります。名前の通りですが、前者は病院で測定する血圧、後者は自宅で測定する血圧を意味します。「診察室血圧 ≧140/90mmHg、家庭血圧 ≧135/85mmHg」で、高血圧と診断が確定されます。当院でもそうですが、初めての場所に来たり、医師の診察を受けるだけで血圧が上昇してしまうこと (白衣高血圧) もよくありますので、家庭血圧の診断を優先します。ですので、血圧日記をつけていただくわけです。

家庭血圧は、朝・晩に、それぞれ測定するのが原則で、可能であればそれぞれ2回ずつ測定して平均を出すとよいとされています。測定条件としては、①朝は 朝起床後・排尿後・朝食前に・1-2分の安静後に、②晩は 就寝前に、いずれも静かな環境で、測定してください。血圧計に関しては、現状では手首型のものよりも上腕型がよいと、ガイドラインには記載されています。一家に一台、血圧計を用意して、ご家族で血圧を管理していただくのはいかがでしょうか。

高血圧の治療で最も重要なのは ”生活習慣の改善” です。もちろん血圧の程度、臓器障害や合併症、危険因子の程度によっては、早期から降圧薬による薬物療法となりますが、やはり基本は食事療法、運動慮法です。降圧目標は140/90mmHg未満であり、また糖尿病や慢性腎臓病がある場合は130/80mmHg未満となります。高血圧が持続することによる心血管病の発症や再発をおさえ、命にかかわってしまうことを減らすとが治療目的であり、健常者とかわらない日常生活を送ることができるように管理させていただきます。