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持続血糖モニタリング

今回は、少し専門的な糖尿病診療のお話になります。糖尿病の一般論については先に述べましたので、こちらをご覧下さい。それでは早速ですが、”持続血糖モニタリング” をご存知でしょうか? 糖尿病の診療において、血糖測定が重要であることは言うまでもありませんが、自己血糖測定や採血などの従来の測定方法では、その時点での値しか把握することができませんでした。近年、この欠点を補う血糖測定方法が注目されており、”連続的に” 血糖値を測定することが可能となっています。『点ではなく線で評価する時代』 と言われています。

実際には、腹部や腕に専用のセンサーを装着して、皮下の糖濃度を、1-2週間ずっと連続で測定します。厳密には、血中の糖濃度とは異なるため、若干の差が生じます。ただし、そもそも正確な血糖値を測定することが目的ではなく、あくまで血糖値の日内変動をモニタリングすることが目的であることを理解する必要があります。この持続血糖モニタリングのシステムとして、CGM (Continuous Glucose Monitoring) やFGM (Flash Glucose Monitoring) があります。

例えば、食事を摂取すると、血糖値が上がり始め、いつピークに達し、どのタイミングで下がり始めるのかなどの情報を得ることができます。もちろん血糖値のピークもわかりますし、”かくれ高血糖” と呼ばれる食後高血糖を見落とすこともありません。

最近、テレビの健康番組などで、”食事の順番” がよく取り上げられています。どういう順番で食事をすると血糖値が上昇しにくいかを検証しています。ここで、この持続血糖モニタリングが用いられています。モニタリングした状態で食事を摂取してもらえば、血糖変動を追うことができますので、実際に当院での栄養指導の際にも、得られた持続血糖モニタリング結果を用い、食事の順番なども加味した個別の指導をさせて頂いています。ちなみに、下記の順番で食べると良いとされており、急な血糖上昇を防ぐことができます。

① まず、野菜などを食事の前半で食べる。
② 続いて、肉・魚・大豆などの蛋白質を食べる。
③ 最後に、ごはん・パン・麺類などの炭水化物を食べる。

逆に、低血糖の検出にもすぐれ、その頻度や程度を把握することができます。また自覚しない低血糖や、睡眠中の低血糖を見つけることもできます。これらを確認することで、より安全で、効率のよい治療を提供することが可能となっています。さらに、これらを応用し、インスリンポンプによる治療を組み合すこともでき、特に1型糖尿病の患者さんにおいて、血糖コントロールや生活の質が著しく改善されることもあります (SAP療法:Sensor Augmented Pump)。

以上のように、これまでとは違った視点で、糖尿病のコントロール状況を再確認することは、患者さんにとって大きなメリットです。糖尿病の診療も目覚ましく進歩し、治療薬だけでなく、医療機器もどんどん開発されてきています。大学病院での豊富な診療経験をもとに、当院でも ”持続血糖モニタリング” を積極的に使用しています。その実績が認められ、厚生労働省の施設基準を満たしていますので、保険診療でこれらの検査や治療を受けて頂くことが可能となっています。

ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせ下さい。慣れたスタッフもいますので、より安心して診療を受けて頂けるかと思います。

花粉症

今日は花粉症のお話です。インフルエンザが記録的な流行をみせる中、花粉症まで重なってきます。せっかく春が近づいているのに、憂鬱になりますよね。

花粉症とは、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称であり、主にアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎のことをいいます。咳ぜんそく気管支喘息にも悪影響しますので注意が必要であり、当院でも積極的に花粉症の治療を行っています。花粉症は、『鼻アレルギー診療ガイドライン2016』 などに準じて診療を行います。

日本人の約5人に1人は花粉症と言われています。2月中旬からの飛散が予測されていますが、花粉が飛び始めてすぐに症状が出る人もいれば、たくさん飛んではじめて症状が出る人もいます。病状も同じように、軽い場合、重い場合があり、さまざまです。つまり同じ花粉症でも、個人差があるわけです。

外から侵入してきた花粉に対して、体が ”異物” と認識することで、アレルギー反応が起ります。その結果、目のかゆみ・くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が引き起こされてしまいます。また、あまり知られていませんが、頭痛・微熱・倦怠感などを伴うこともあります。花粉は粒子が大きいため、目や鼻に付着し、気管支や肺の奥までは入らないとされていますが、咳や喘息症状の悪化もしばしば伴います。これは、目や鼻でアレルギー性炎症のスイッチが入ってしまうと、気管支や肺まで炎症が伝わってしまうからです。

私は、何の病気 (癌・感染症・アレルギーなど) であっても、”全身治療” と ”局所治療” に大別して診療にあたります。これを組み合わせて、病気を抑え込みにかかります。前者は血液の流れにのって全身に広がってくれるもの、後者はその場所で特にパワーを発揮してくれるもの。花粉症においては、抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン薬の抗アレルギー薬の内服が前者にあたり、点眼薬・点鼻薬が後者にあたります。また、咳や喘息症状を伴う場合は、吸入ステロイド薬も併用します。

「治療の開始は、花粉の飛びはじめに」 と言われています。三重県では2月上旬が望ましいでしょう。最近の抗アレルギー薬は、眠気などの副作用も少なく、かつ効果も高くなってきています。また、点鼻薬や点眼薬も当院で処方できますので、遠慮なくお申し付け下さい。なお、今季はシーズンを逸してしまいましたが、来季に向けてアレルゲン免疫療法を行うこともできます。

最後にご自身での対策として、メガネ・マスクの着用、外出を控える、花粉のつきやすい衣類を控える、衣服を払ってから入室する、こまめに掃除をするなどがあります。いずれも抗原回避が目的になりますので、ぜひお気を付け下さい。

アレルギーポータル

2018年10月に、厚生労働省と日本アレルギー学会により、『アレルギーポータル』というサイトが公開されましたが、皆さんご存知でしょうか? アレルギー疾患対策基本法に従って、国民に正しい知識を伝えることが目的とされています。

トップページには、「アレルギーについて、正しい知識を身につけて疾患の治療、管理、予防をしましょう」と記されており、アレルギー疾患の特徴・症状・重症度・治療方法などの基礎知識について、とてもわかりやすく解説されています。また、レイアウトやカラーもきれいで、直感的にページを閲覧することができます。

都道府県におけるアレルギー疾患の医療提供体制整備もすすめられていますが、アレルギーポータルの三重県の医療機関情報ページ (アレルギー専門医一覧) に、当院も掲載されています。当院が担わなければならないのは、成人喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーやアナフィラキシーの管理 (原因アレルゲン検索エピペン処方) などになります。

中でも呼吸器疾患の代表である、”気管支喘息” の診療においては、地域の中心的な役割を担えるようにならなければならないと考えています。①適切な診断、②吸入薬を中心とした適切な治療、③患者さんにあった吸入器の選択、④治療継続の必要性の理解、⑤治療介入後のコントロール状況の把握、⑥他の呼吸器疾患の除外など、挙げれば切りはありませんが、とにかく患者さんには、安心して診療を受けていただけるよう努めてまいりたいと思います。

アレルギーポータルを活用し、正しい知識を身につけることで、より良い診療を受けて頂くことが可能になると思います。患者さんだけではなく、医療従事者の方も、ぜひ一度ご覧下さい。

第4回 糖尿病教室

当院では、糖尿病の予防・管理・治療意欲の向上などを目的として、季節ごとに ”糖尿病教室” を開催しています。

第1回「続けたくなる運動療法」、第2回「災害への備え」、第3回「年末年始の過ごしかた」 、それぞれをテーマとして教室を開催させて頂きました。多くの方にお集まり頂き、盛況に教室を終えることができました。第4回は、「かくれ高血糖」をテーマとさせて頂きます。

聞きなれない言葉かもしれませんが、基本的には、”食後の高血糖” のことを意味します。食前の採血では、どうしても見落とされてしまうため、「かくれ高血糖」と呼ばれています。今回は、その意義や対策についての勉強をしましょう。

なお、”糖尿病教室” は、保険診療適応となります。3割負担の方で、300円程度の費用になります。当院に通院中の患者さんにはお声掛けさせて頂きますが、定期通院のない患者さんでも参加していただけますので、ご希望の方は当院までご連絡下さい(⇒059-233-0024)。定員は15名までとなりますので、お早目にお申込み下さい。

●第4回 糖尿病教室
・日時:2019年2月28日(木)、12時30分~13時30分
 1時間前後を予定します(14時から午後診のため)
・場所:おおにし呼吸器・糖尿病内科 呼春の森診療所 待合室
・内容:医師・看護師・管理栄養士 「かくれ高血糖」
・持ち物:保険証、当院診察券・糖尿病連携手帳(お持ちの方)
・費用:300円程度(保険診療適応)

認定産業医

院長が日本医師会認定産業医に認定されました。会社や教育機関などにおける従業員の皆様の健康管理を担当させて頂きます。時間外労働や精神衛生面の管理を提供したいと考えています。宜しくお願い申し上げます。

医学博士

院長が三重大学より、医学博士の学位を授与されました。学位論文のテーマは「MMP-2過剰発現マウスにおける短期タバコ煙によるemphysema誘発の検討」です。難しい内容ですが、”喫煙” と呼吸器タバコ病の代表である “COPD” の研究です。学んだことは、今後、禁煙治療やCOPDの診療に活かしていきたいと思います。関係者の皆様、ありがとうございました。

呼吸器指導医

院長が呼吸器指導医に認定されました。三重県には呼吸器専門医が50名しかおらず、うち18名が呼吸器指導医であります。都道府県別の人口比率では、残念ながらワースト3に入るそうです。つまり、少ない専門医で多くの患者さんを診療しなければならない、ということになります。そうであっても私たちは、少しでも多くの患者さんに専門診療を提供できるように、三重大学医学部附属病院呼吸器内科を中心に、一丸となって頑張ってまいります。また後輩の育成・指導にも力を注ぎたいと思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

大学卒業以来でしょうか、車で、東京に行ってきました。
帰りの足柄PAでは、雲間から雪化粧の富士山が望めました。
何かいいことあるかな。

1月7日(月)から診療を開始致します。
本年も宜しくお願い申し上げます。

第3回 糖尿病教室

当院では、糖尿病の予防・管理・治療意欲の向上などを目的として、季節ごとに ”糖尿病教室” を開催しています。医師・看護師・管理栄養士から様々なテーマに沿ったお話をさせて頂きます。そして、豊富な指導経験のあるスポーツインストラクターから、運動療法を提供させて頂きます。一味違った運動療法を受けてみてはいかがでしょうか。

第1回「続けたくなる運動療法」、第2回「災害への備え」とも、好評でしたが、第3回は 『年末年始の過ごしかた』 をテーマに教室を開催したいと思います。年末年始の暴飲暴食に、冬季の運動不足が重なることで、2月から4月にかけて、年間を通して最もHbA1cが上昇することが知られています。年末年始は、しっかりおさえておきたいところです。

なお、”糖尿病教室” は、保険診療適応となります。3割負担の方で、300円程度の費用になります。当院に通院中の患者さんにはお声掛けさせて頂きますが、定期通院のない患者さんでも参加していただけますので、ご希望の方は当院までご連絡下さい(⇒059-233-0024)。定員は15名までとなりますので、お早目にお申込み下さい。

●第3回 糖尿病教室
・日時:2018年11月29日(木)、12時30分~13時30分
 1時間前後を予定します(14時から午後診のため)
・場所:おおにし呼吸器・糖尿病内科 呼春の森診療所 待合室
・内容:医師・管理栄養士・スポーツインストラクター 「年末年始の過ごし方」
・持ち物:保険証、当院診察券・糖尿病連携手帳(お持ちの方)
・費用:300円程度(保険診療適応)

呼気NO検査

一酸化窒素 (nitric oxide:NO) は、生体内で産生され、多彩な作用を示すことが知られています。アレルギーに関連した咳嗽気管支喘息の患者さんにおいて、気道で ”炎症” が起こり、その病態を引き起こしていることはこれまでも述べてきました。吸入ステロイド剤を中心とした治療により、この ”炎症” を抑えることで、咳や喘息の症状は軽快するわけです。

体内の炎症を起こす物質 (炎症性サイトカイン) により、気道の上皮細胞や炎症細胞が刺激されると、多量のNOが産生されることがわかっています。NOはガスであり、吐いた息の中 (呼気中) に排出されますので、専用の測定器を用いて呼気中のNO濃度を測定することで、気道炎症の有無を評価することが可能となっています。つまり、息を吐くだけで、炎症があるかないかがわかります。

実際の測定は、少しコツがいるものの、非常に簡単です。大きく息を吸った後、測定器に備え付けられたマウスピースをくわえ、10秒ほどゆっくり息を吐いていただきます。ゆっくり息を吐くときに、一定の流量を保つことがポイントであり、早く吐きすぎると値が低く、遅すぎると高くなり誤差が生じてしまいます。

測定値はppb単位で表示されます。結果は、用いる測定器により若干の差が出てしまうことも知られていますが、2018年3月に日本呼吸器学会が発刊した「呼気NO測定ハンドブック」によると、下記の基準とされています。

●健康な成人の日本人 呼気NO濃度
・平均値 15 ppb
・正常上限値 37 ppb
●喘息患者 呼気NO濃度
・22 ppb以上 喘息の可能性が高い
・37 ppb以上 ほぼ確実に喘息

ここで私の考えですが、呼気NO濃度の実測値 (絶対値) は少し余裕をもって解釈したいと思っています。測定器の種類や呼気流速による誤差の他にも、呼気NO濃度が低下する因子として、喫煙・呼吸機能検査施行後・ステロイド薬の使用などが挙げられ、呼気NO濃度が上昇する因子として、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・急性感染症などがあります。ある程度の誤差やばらつきを考慮し、例えば測定結果が21ppbであった場合も、「22ppb未満だから絶対に喘息ではない」と解釈するのではなく、「だいたい22ppbだし、むしろ喘息の可能性もある」と解釈すると良いかもしれません。

さて、もう1点大事な点ですが、呼気NO検査において、過去の値と比較をすること (相対値) はとても有意義です。吸入ステロイド剤などによる治療を行うことで、鋭敏に反応し、多くの場合、呼気NO濃度は低下します。経験的には、呼気NO濃度が下がっていれば、基本的には治療は効いていると判断してよさそうです。逆に値が上昇してくる場合、病状の悪化や、患者さんが治療をさぼっているなどの場合もあるので、管理に用いることができます。

そもそも気管支喘息は、呼気NO検査だけで診断するものではありませんが、上述のように、診断の助けとなり、その後の管理にも有意義です。「えっ、もう終わりなの?」といった簡単な検査ですが、呼吸器内科診療において、なくてはならない存在になってきていますので、必要に応じて施行させていただきたいと思います。